本の中の「わが町」
 
たるげい 2002年11月27日号
新谷保人
 
 
 「スワン社」という会社をスタートしました。図書館の経営・運営にまつわる一切を取り扱う会社を目標としているので、連日、図書館未設置町村の連絡先を調べたり、なぜこの地域は図書館未設置のまま今に至っているのか?などといった事柄を調べたりしています。調べているといろんな地域の姿が見えてきますね。
 なぜ「未設置町村」なのか?とよく聞かれます。まあ、単純に言えば、大手は相手にしてくれないからです…すでに「図書館」があるところは、今までの経営ノウハウや人材の蓄積があるわけで全然スワン社なんかお呼びじゃないですね。(都市部の大手の図書館は、この北海道の経済不況下で「よくやってるなぁ…」と感じる図書館が多いです。家計が苦しくなれば、すぐに「本なんか無駄なもん買うな!」「図書館なんか鍵かけておけばいいんだ!」って人間がいっぱいいる風土ですからね。そんな中でよくやっていると思う。)
 今後、不況がさらに厳しくなって、過疎や町村合併話が急激に進行し始めたりすると、あるいは、「図書館リニューアル」や「ネットワーク化」などのあたりで接点が出てくるかもしれないとは考えるけれど、今のところ話は何もないです。
 
 というわけで、いつもの「未設置町村」に帰る。最近よく使わせてもらうサイトは「北海道新聞社」の公式ホームページ内にある「北海道212市町村情報」というサイトです。北海道の市町村情報を横断的に通覧できる点で、これに勝るサイトは今のところないと思う。
 
 
 ところで、「図書館の未設置町村」と聞くと、一般の人はどんな感じをイメージするでしょうか。都市部の人だったら、本当に「図書館がない」んだ…と理解する人もいるのではないか。東京の人なんかだったら「図書館もない町で暮らさなければならないなんて、なんて可哀想なの…」くらいは言いかねない。(笑)
 
 まあ、これは誤解です。「図書館の未設置町村」というのは、正確に言うと、国の法律「図書館法」の中で規定されている「図書館」を持っていない町村と言うことです。「図書館法」で規定されている設置基準レベルの「図書館」は今のところ無理だ…というだけの話。だから、基準には達していないけれど、実際には「○○町公民館図書室」とか「××村民センター図書室」といった名前で「図書館」はあるのです。
 その中には、一般の図書館なんか問題にならないくらい頑張っている「公民館図書室」だってあります。全部が全部、やる気のない田舎図書館なわけではありません。スワン社は、そういう熱い想いの中小図書館たちといっしょに仕事ができれば…という気持ちで作った会社なのです。
 
 
 小さな図書館が頑張っている姿には何かしら感動がありますね。例えば「枝幸町立図書館」。枝幸(えさし)って、どこにある町かわかりますか? 「北海道212市町村情報」で「宗谷地方」を選択。さらに「宗谷管内」の中を見て行くと出てくるのが「枝幸町」です。昔は「北見枝幸」と言っていたと思うのだけど(私は今でも「きたみえさし」って言ってしまいます…)いつのまにか「枝幸町」になっていた。私は、道北を旅する時はたいていここをベース基地に使います。
 その枝幸町のホームページに、「本の中の枝幸」というページを見つけた時はちょっと嬉しかったですね。枝幸町立図書館、頑張ってるじゃないか!
 
 
 

本の中の枝幸

枝幸町立図書館発行の「ななかまど」より転載
この文章は、枝幸町立図書館で毎月発行している「ななかまど」に、
平成7年7月から連載中の作品を転載しています。
第29回でひとまず終了しました。

目次

第1回 第2回 第3回 第4回
第5回 第6回 第7回 第8回
第9回 第10回 第11回 第12回
第13回 第14回 第15回 第16回
第17回 第18回 第19回 第20回
第21回 第22回 第23回 第24回
第25回 第26回 第27回 第28回
第29回  連載終了のお知らせ
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 ひと通り読み終わるのに何日かかかったけれど、いや、大変勉強になりました。第3回の「西村京太郎」(だろうと思うのだが確証なし…)の回なんかでは、後半にちょっと触れられている松本清張の作品の中に、小樽を舞台にした『黄色い風土』という作品があることなどを教えてもらったりして、なかなか得るところの多いページでした。著者の佐藤久夫氏に感謝です。
 
 こういう人が住んでいる町はいい町なんじゃないかなぁ…と思います。さすが、未設置町村の塊みたいな地域の中で、ひとり「町立図書館」の看板を掲げている町だけのことはある。(あ、浜頓別町もあったか…) でも、カニが旨いだけの町じゃないことは確か。
 
 もっと「枝幸町立図書館」のこと知りたいなぁ…と思ったんですけれど、図書館のホームページはないみたい。残念。
 
 
 こういう「わが町」へのアプローチって技、もっともっと図書館は使うべきなんじゃないかなぁ。金はかからないし、書庫で半分死蔵状態の本や雑誌にも今一度陽の目があたるかもしれない。町の人も喜ぶし。
 私が見てきた限りでは、やっぱりここでも、あの「ふるさと大夕張」ホームページは上手いなぁ!と感じますね。一日の長がある。「水の中のわが町」ならぬ「本の中のわが町」だって、当然しっかりやっているんですよ。
 
 私の書いている『小樽の街を歩こう』なんかも、こういう『本の中の枝幸』と『大夕張図書館』の中間くらいの存在なのかな。
 
 こういう、町を愛する人が作ったご当地ホームページは大好きです。どこかで見かけましたら私にも教えてください。まだまだ勉強が足りなくて道東方面なんかは全然手つかずです。まあ、道東とか道南って、なんかうじゃうじゃそういうホームページ、ありそうですけどね。