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啄木転々
 
 
ゆるぎ出づる汽車の窓より
人先に顔を引きしも
負けざらむため
 


一月の釧路
 
 

 明治40年12月12日夜の殴打事件。啄木は翌日辞表を出し、そして二度と小樽日報社に復帰することはなかったのです。無職のまま迎える明治41年の新年。そして、1月19日には、家族を小樽に置いて、単身、釧路へ。「机の下に火を入れなくては、筆が氷つて何も書けぬ」(1月24日) 十二月の小樽でも充分寒いのに、さらに一月のさなかの釧路とは! しかし啄木は最後まで文人だと感じます。(誰も書かないので、あえて書くが…)釧路の極寒に生きて、誰もが書くような「寒い、寒い!」の連発など決してない。寒い時は「筆が氷つて何も書けぬ」と的確に記す。また、歌人啄木にとっては噴飯ものの北海道独特の「下の句かるた」。これにも啄木は文句一つ言うでもなく、楽しそうに梅川ミサホたちと遊んでいるのですね。全てを受入れる覚悟をした人間の美しさ。
 

 
 
釧路新聞社