Welcome to 小樽啄木会 Homepage
URL http://www.swan2001.jp/takuindex.html
 
 
連絡先:(〒047-0155)小樽市望洋台2-32-14 水口忠 TEL:0134-52-2775
 

山下多恵子氏、「啄木と郁雨」(未知谷)出版!
正しい「小樽日報社」の写真が使われた初めての本

小樽写真館、2005年までの写真は10月末で終了します

 
 
明治四十年九月、啄木は札幌へ…
 
(札幌/橘邸の「林檎之碑」)
 
 乗客の大半は此処で降りた。私も小形の鞄一つを下げて乗降庭(プラツトフオオム)に立つと、二歳になる女の児を抱いた、背の高い立見君の姿が直ぐ目についた。も一人の友人も迎へに来て呉れた。
『君の家は近いね?』
『近い。どうして知つてるね?』
『子供を抱いて来てるぢやないか。』
 改札口から広場に出ると、私は一寸立停つて見たい様に思つた。道幅の莫迦に広い停車場通りの、両側のアカシヤの街(なみき)は、蕭条(せうでう)たる秋の雨に遠く/\煙つてゐる。其下を往来(ゆきき)する人の歩みは皆静かだ。男も女もしめやかな恋を抱いて歩いてる様に見える。蛇目の傘をさした若い女の紫の袴が、その周匝(あたり)の風物としつくり調和してゐた。傘をさす程の雨でもなかつた。
『この逵(とほり)は僕等がアカシヤ街と呼ぶのだ。彼処(あそこ)に大きい煉瓦造りが見える。あれは五号館といふのだ。……奈何(どう)だ、気に入らないかね?』
『好い! 何時(いつ)までも住んでゐたい――』
 実際私は然う思つた。
 
(石川啄木「札幌」)
 

 
メールの宛先はこちら
tamizu@nifty.com