平成19年10月13日(土) ◎記念講演会 (午後2時より/小樽市立文学館1階 第1研修室) ◎朗読と歌の夕べ“啄木に寄せて” (午後6時半より/小樽市立文学館2階 展示室) |
啄木会のひと月遅れの『啄木忌』、今年は石川啄木の来樽と小樽日報創刊100年を記念した小樽市立文学館特別展『石川啄木と小樽日報』(H19・9/8〜20・1/20)の開催に合わせ、『小樽啄木祭』として、第1部の『記念講演と歌碑朗詠』そして、第2部では『朗読と歌の夕べ“啄木に寄せて”』を、小樽市立文学館や小樽文学舎との共催で、多くの方々の協力で、予想を上回る参会者で、成功裏のうちに実施することが出来ました。 |
第1部 『記念講演と歌碑朗詠』 今年は、函館在住の啄木研究家である桜井健治氏の「漂泊者啄木と北海道」と題した講演でした。桜井氏は、函館市の商工観光部長としての勤務の傍ら、日本近代文学会会員として、北海道文学館評議員としての活躍とともに、啄木に関する多くの著書も著しています。それらの研究の上に立って、今回H18年7月「啄木の風景」と題して、北海道新聞メディア局連載の年譜を資料に、漂泊者啄木の北海道における姿を、実像虚像取り混ぜて語られる啄木について、氏独自の視点から語られました。講演の最後のほうで、啄木の歌の中で、「海」を詠った5首について、新説とも言うべき新しい考え方で、歌の中に潜んでいる啄木の飽くなき東京への憧憬を歌から読みとる切り口を披瀝されました。さて、その「海」の歌5首のうち、2首は函館で、3首は釧路の「海」を詠んでいるのに、小樽はゼロ。日本海と太平洋で分けて考えていくと、東京につながる海として、それはうなづけるそうですが、あなたはどう思いますか。 講演を終えた後は、恒例の歌碑朗詠。今年は、日本詩吟学院岳風会の山田猿岳氏他の師範の先生による、水天宮歌碑の「かなしきは…」と、小樽公園歌碑の「こころよく…」の2ヶ所での朗詠となりました。途中の通称「啄木通り」を通り、最初の寄宿先となり、現在お寿司と割烹の店「た志満」の店先で、その2階の居室にある「床柱」についての水口会長の話に頷きながら、公園へ。今年は、高台の水天宮から眺めが樹木を伐採した関係で、素晴らしい眺望となり、秋の柔らかい港と市街の風景を背景に聴く朗詠もまた格別とは、参会者皆さんの声でした。 |
第2部 『朗読と歌の夕べ“啄木に寄せて”』 第2部の企画は、啄木会始まって以来のコンサートです。歌曲集『啄木によせて歌える』(越谷達之助曲)などを、澤田一枝さんのピアノ伴奏と北嶋康子さんのソプラノで、また、水口会長の企画依頼を受けた、小樽市役所グリークラブの指揮者の中村浩さん作曲の、小樽の啄木歌碑3ヶ所の歌をつないだ『石川啄木の歌碑に寄せて』をグリークラブの男声四部合唱で、それぞれ参会者の心をとらえた素晴らしい歌曲の演奏となりました。演奏会の最初は、小樽朗読友の会の大塚稜子さんと松浪啓子さんの、「雪中行」「初めて見たる小樽」(『啄木文集』より)と「汽車の旅」(『啄木歌集』より)の朗読がありましたが、さすが専門家の朗読で、しわぶき一つない会場に、朗読の声だけ響いた幕開けでした。演奏会の途中、水口会長からの仮想「携帯電話で聞く啄木のメッセージ」は、会場から笑いを誘う、一服の清涼剤となりました。 |