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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



九月の札幌 (二)
 
 
ポプラ  向井夷希微
 
しだれて長き糸柳の
いつ迄戀ふる母にかも。
生れしつちの上にしも
太身は強く立てれども、
延べし腕(かひな)の力なく
指もろ共にうなだれぬ。
 
そゞろ行く道まちはづれ、
大野の空の低くして
森の緑の圓らかや、
薄るゝ夕日背にあびて
欝たるすがた人の世の
憂ひを深く籠むるらむ。
 
(大通公園/藤川叢三・有島武郎文学碑)
 
(近代美術館/山内壮夫・子を守る母たち)
 
さなり柳にあらなくに、
古りにし樹々も今し猶
土さりあえぬ残り気に
丈並の幅を犯しては、
うらぶれ人のよろこびか
か黒き蔭を領じぬる。
 
道をはさめるアカシヤの
あいなき木蔭のがれいで、
ふと見るポプラの直ぐよかに
下開けたる浄念の
ひとりあかなく一筋に
頂(うなじ)も腕も空させる。
 
(近代美術館/本郷新・嵐の中の母子像)
 
(大通公園/佐藤忠良・若い女の像)
 
こゝにはじめて勇猛の
精進はげむひじりあり。
ポプラ秀でし姿こそ、
ま夏の緑統(し)る君の
高き思を、えらばれて
身に帯び立てる預言者よ。
 
群がる緑皆伏して
烈(なみ)のことごと令まてる
様にも似たり。むべしこそ
ポプラ一きは落日の
残りの栄(はえ)を冠に、
天雲しぬぎ立ちにけれ。
 
(グランドホテル/本郷新・レッスン)