七月の札幌 |
「ハヤカヘ。 ゲンキですか。わたし、がんばっています。こうぼうで、こんどはじめてわたしのつくった作品がうられます。ペンダントです。ひとつ、おくります。これが、じぶんのいま一番好きないろです。だから、ハヤカにおくります。 夏がきます。いちど、あそびに来てください。ハヤカにあいたい――とっても。 このペンダントが、ハヤカのこううんのお守りになりますように」 封筒を逆さにすると、中から銀の鎖につながれたガラスのペンダントが出てきた。 淡い赤色のペンダント。 (九頭竜郁流「北へ。」) 明日学校でこのペンダントを見せたら、琴梨はどんな顔をするだろう? きっとうらやましがるだろうな。二人でこれを買いに、小樽に行くという手もある。それも楽しそうだ。 クラスメイトの琴梨とは大の仲良しなのだ。いまのところ、二人ともカレシはいない。 夏の恋か。 琴梨とわたし、どっちが先に出会うかな。 きらきらと光を反射しながら揺れるペンダントを見ているうちに、鮎はそんなことを考えていた。 ――どちらが先に恋を見つけるにしても、みんなハッピーならいいな。 わけもなくそう思った。 七月の札幌。小説の中の七人の女の子たちを最後でわらわらと登場させる手際も見事なものです。(ま、ゲームなんかでは常套手段なのかもしれませんが…) 「夏かぁ……」 めぐみは小さなため息をついた。 北海道の夏は短い。 学校の友だちも、みんないまからその短い夏をいかに楽しむかに頭を捻っている。 ほんの一瞬、だけど一生忘れられない夏がやってくるかもしれないんだもの。 めぐみは、窓から流れてくる暖かな風に向かって目を閉じた。 どきどきわくわくの夏がやってくる。 北海道の短い夏。 わずか数週間だけの、暑い季節。 その夏はいったい自分に、どんな思い出を残してくれるだろう。 なんだか楽しみ……なにかが起こる、そんな予感がするの。 夏かぁ… 羊蹄山麓の町に住みはじめて五度目の夏。目の前に次々現れる物事に対応しているけれど、物事の慌ただしさに疲れ気味。 |