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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



十二月の小樽 (三)
 
 

 拓也とは、幼稚園からずっと友だちだったが、柏木がぐれてから、おたがいに敬遠して、あまり口をきかなくなった。
 その朝も、雪道を並んで歩いたけれど、ほとんど会話はなかった。
 中学の校門を入ると、校庭は純白のシーツを敷きつめたように真っ白で、それに朝日があたって、眩しく輝いている。
「あれを見ろ。雪だるまじゃねえか?」
 突然、柏木は校庭の隅を指さして言った。
 拓也は、柏木の指さすほうに視線を向けた。
 たしかに、かなり大きい雪だるまが、ぽつんとすわっている。
 顔には、炭だろうか、目と鼻とロがつけられているが、目は、まるで泣いているように八の字になり、口はへの字になっている。
「だれだ? ふざけた野郎だぜ」
(宗田理「小樽デスマッチ」)

 小樽旭中学の二年生、吉見拓也。十二月、月曜朝の登校で、おかしな雪だるまを発見。もちろん、校庭に雪だるまなんて、入学以来はじめて。

「ミッチーが死んでる!」
(中略)
「あそこだ」
 岡部は、校庭に出ると一隅を指さした。
 そこには、拓也が朝見た雪だるまがあったが、顔の部分が半分溶けて人間の顔が露出していた。
「きゃあ!」
 女子生徒が悲鳴をあげた。
「あれはだれだ?」
 黒松がきびしい顔で聞いた。
「溝口です」
(同書より)

 中学の二年坊なんて、こんなもんかなぁ…

 朝の降雪を「純白のシーツを敷きつめたように」とする陳腐な比喩も気になるが、それ以上に気になるのが、ルビ。「小樽」に「おたる」とルビを振るのは(ま、小樽知らない東京の中学生もいるだろうから)我慢するとしても…
 「敬遠」に「けいえん」、「突然」に「とつぜん」、「野郎」に「やろう」、「一隅」に「いちぐう」、「露出」に「ろしゅつ」、「悲鳴」に「ひめい」とルビを振るのは止めてほしい。
 1994年冬の小樽の中学校。この時の中坊が、もうアラフォーなんだから、たまげてしまう。小樽のつっぱりグループ「海ネコ」と「オショロ」(笑)とかさ。愉快な読み物でした。

 という感想は親切すぎるかな。正確に言うと、愉快と不愉快の泥んこ道をちんたら歩いているような不思議な読み物でした。

 1994年、自動車・携帯電話機の買取制度(携帯電話機の売り切り制)の導入とともに、初期費用、回線利用に必要な料金の大幅な値下げが行われ、通信業界全体の大きなターニングポイントとなった。NTT移動通信網(NTTドコモ)系9社、第二電電(DDI)系セルラーグループ8社、日本移動通信(IDO)に、新規参入の第二弾であるデジタルホングループ(現ソフトバンクモバイル)とツーカーグループの参入のほか、端末機の供給でも家電メーカーなどが加わり、20社近くが名乗りを上げた
(ウィキペディア)