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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



七月の札幌
 
 

 地下鉄を降りて中島公園に入ると、すぐ右手に遊技広場があります。そこの一角に建っているのが、山内壮夫(やまのうち・たけお)の「森の歌」。
 高さ6メートルの大作。1958年夏の「北海道大博覧会」を記念してつくられ、最初は公園内の「百花園」に設置されていたのですが、1997年の音楽専用ホール「キタラ」の建設に伴い、現在の場所に移築されました。(道理で…)
 私の記憶の中でもかなり古層に属する「北海道大博覧会」。当時、5歳。記憶では、小樽会場の祝津(現在の水族館)に行く時、バスではなく海上を遊覧船に乗って行ったことと、札幌会場(中島公園)のあの池でウォーターシュートをやっていた光景があるのですが、残念ながら、この「森の歌」の記憶はありません。目にしていたら、これは相当にインパクトがあるものですので覚えていると思うのですが…
 その後も、少年期、青年期を通して中島公園は何度も行っていますが、「森の歌」を見た記憶はない。それを不思議に思っていたのですが、「キタラ」の説明を聞いて、初めて事情がわかりました。あの頃は、もう札幌にはいなかった。

 当初の計画では、作品は傷みが進んでいることもあり取り壊される運命にあった。しかし市民のあいだから大反対の声が上がり、一転、復活。ブロンズに鋳造し直して、この場所に設置されたのだった。公園の芝生の広場にはほかにも、ほぼ同時期に作られた山内の「笛を吹く少女」「母と子の像」「猫とハーモニカ」「鶴の舞」が配置された。
(谷口雅春「札幌アートウォーク」)
 

 今にして思えば、Kitara建設にともなう公園整備の中で、「森の歌」は絶対に残されなければならない彫刻だった。なぜならこの彫刻の上段は音楽がテーマで、角笛やパンフルートなどの楽器を吹く子ども像の中には、ギリシャ神話でアポロンが爪弾いた竪琴「キタラ」を持った少年がいるからだ。少年は現在、ちゃんとKitaraを向いてキタラを抱いている。
(同書より)

 「キタラ」少年ばかりではなく、「笛を吹く少女」も、「ハーモニカを吹く猫」(←猫だったのね!)も、みーんなキタラを向いているのが、なんかおもしろい。
 

 思うのだが、「札幌」を象徴する彫刻は、本郷新ではなく、この山内壮夫ではないだろうか。いつでも「札幌」というと、本郷の「牧歌」(札幌駅)や「泉」(大通公園)が当然のようにとりあげられるが、なーんか、札幌に暮らしている市民の感覚からはズレがある。あれは、観光客や地方出身者のためのモニュメントではないだろうか。いかにも「北海道」している感じが、近年鼻につくようになってきている。本郷新は全国区。札幌地方区は、山内壮夫の彫刻と田上義也の建築でできているように思うのです。街を歩いている時、身のまわりにあったのは、そんな「札幌」だった。