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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



五月の小樽 (二)
 
 

旧坂別邸が全焼 「ラブレター」映画ロケ地
【小樽】二十六日午前八時四十分ごろ、「旧坂(ばん)別邸」として小樽市の歴史的建造物に指定されている、同市見晴町一六、無職坂輝彦(八〇)方から出火し、木造二階建て延べ二百平方メートルと、敷地内の物置二十平方メートルを全焼した。けが人はなかった。
 小樽署の調べによると、坂さんは一人暮らしで、「室内のまきストーブの上に洗濯ものを干し、電話で部屋を離れて戻ってくると、煙が上がっていた」と話しているという。
 「旧坂別邸」は、歌志内市の炭鉱主だった坂さんの父・敏男さん(故人)が別邸として一九二七年(昭和二年)に建てた。アメリカ近代建築界の巨匠フランク・ロイド・ライトに師事した田上義也の設計。女優中山美穂さんが二役で主演した映画「Love Letter(ラブレター)」(九五年)の小樽に住む主人公の住宅としてロケ地になり、韓国などから観光客も訪れる人気スポットだった。
(北海道新聞 2007年5月26日夕刊)

 この夕刊一面記事には「炎に包まれる旧坂別邸」の写真が付けられていました。撮影したのは西村和雄さん。旧坂別邸のはす向かいに建つ、これも田上の建築作品・旧瀬川邸の現在の主です。道新記者は「近所に住む西村和雄さん」と素っ気なく書いているけれど、そういう問題ではないよ。美しい田上建築をここまで守ってきた同志が、その最後を看取っているんですよ。

「バリバリ、ドーンという音がして、一気に火の手が上がった。観光客もたくさん来ていたので、地域にとっても惜しい」
(5月26日夕刊の西村氏コメント)
「歴史的価値のある建物を失い、小樽市にとっても大きな損失」
(5月27日朝刊小樽・後志欄の西村氏コメント)

 観光客? 西村さんは本当にこんなこと言ってるのかな? 坂別邸が田上義也の名作だということを知らず、映画「ラブレター」に使われたから「有名な」建物だと新聞記者が思っているから、こういうおかしなインタビューになる。まさしく、かなしき小樽だ。

 著作権の関係で、「炎に包まれる旧坂別邸」の写真をここに掲載できないのが、いいことなのか、そうではないのか、もうわからない。この日の記事と美しい最後の写真は切り抜いて、私のファイルの中に大切にしまってあります。今でも。