Welcome to SWAN 2001 Homepage


 
 
かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



二月の札幌
 
 

 救急病院に運び込まれたぼくは、ぼんやりした意識の中で、子供の頃のことを思い出していました。
(山口秀範・文/竹中俊裕・絵「伏してぞ止まん ぼく、宮本警部です」)

 板橋区の常盤台交番に勤務する宮本邦彦警部。2007年2月6日、東武東上線・ときわ台駅で自殺を図った女性を保護したが、自身は入ってきた電車をかわせず、はねられた。担ぎ込まれた救急病院のベッドで彼の意識が還っていったのは札幌で過ごした少年時代。

 ぼくは読書が大好きな少年でした。「邦彦、またこたつで本を読んでるのかい。たまには外で体を動かすのも大事だよ」
(同書より)

 生れ育った札幌では、冬場に大雪が積もります。
「二階の教室の窓は出入ロではない。決して窓から雪の中へ飛び込んではいけません」
 先生の言いつけは毎年守られません。
「楽しいぞー。邦彦君も仲間に入れよ」
「いや、ぼくは決まりを破るのがいやなんだ」
(同書より)

 東武東上線。就職して、結婚して、子どもが生まれて…

 私もその度にもう少し広い部屋が必要になったり、保育所に近いところが必要になったりしては、東上線沿線を転々としました。ですから、2月6日夜のときわ台駅の光景もありありと想像することができます。
 午後7時すぎ。踏切に入り込み、自殺しようとする女性。いったんは交番に連れ戻したが、彼女はふたたび飛び出す。遮断機の前に立ちはだかった宮本警部は、女性に「どんなに私のことを悪くいってもいい。やめてくれ!」と叫んだという。しかし、彼女は飛び込んだ。後を追い、ホーム下の避難スペースに彼女を押し込んだ時、下り急行電車が宮本警部をはねた。
 急行なら、ときわ台は停まりませんから、おそらくはノンストップのスピードで電車は入ってきたでしょう。ものすごい衝撃であったろうと思います。

 都会で暮らす北海道人…

 死のうとした39歳の女性は、どこの県から来た人なのだろうか…