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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



二月の小樽 (三)
 
 

 みんなが、はげましました。
 「春になったら、また公園にいこう!」
 ぶん公の目は、どうもありがとうと、いっているようでした。
 おやえばあさんも、毎日きました。
 でも、いちばんすきなキャラメルを、口にいれてやっても、ぶん公はたべようとしません。
 そして、二月三日のこと。
 この日は、とてもさむい日でした。
 ぶん公が、うごけないほどよわっていたので、亀山先生に電話をかけて、いそいできてもらいました。
 先生は、ちゅうしゃをうったり、くすりをのませたり、いろいろてあてをしてくれました。
 消防のおじさんたちも、なんとか元気になってほしいと、いのりました。
 けれども、お昼ごろ、とうとう、ぶん公は死んでしまいました。
 あんなにかつやくして、小樽の子どもたちに、したしまれていたぶん公は、二十四さいでなくなったのです。
(水口忠・作「消防犬ぶん公」)

 「消防犬ぶん公」の物語には、もう一冊、名作があるのです。これです。
 

 井尻正二の文、金子三蔵の絵になる築地書館の絵本「消防犬・文」。ちょっと反則だけど、表紙の画像を出しました。絵本なので、こればっかりは絵を見てもらわないと金子三蔵の絵のすばらしさを伝えられない。小樽の火事場の緊迫感と喧噪がひしひしと伝わってくる赤。

 やはり名作なんだろうな。奥付の脇に「この本は1975年7月に発行されたものです。読者からの希望があり、2007年5月に再刊いたしました。」なんてわざわざ書いてある。たしかに、私も、持っていればいるだけ人にあげてしまうようなところがありますね。「ぶん公」の物語は小樽人の誇りなんです。