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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



十二月の札幌
 
 

「あちらは寒いでしょう」
と、母は言った。
「はい」
内田祐子が、答える。「今朝は雪でした」
「まあ。――朝、発ってらしたの?」
「昼過ぎの飛行機で……」
「そうですか飛行機に乗れば一時間とちょっと?――でも、やっぱり遠いですねえ」
(赤川次郎「ふたり」)

 内田祐子は、主人公・北尾実加の父が札幌に単身赴任中にこさえた愛人。父にもう一度逢いたさに、突然、東京の家を訪れる。

 実加が中学2年の時、姉の千津子は交通事故で死んでしまう。ところがその後、死んだはずの姉の声が実加の頭の中に聞こえてくるようになった。姉の声は自分にしか聞こえないけれど、自分を確実に見守ってくれていた。
 姉の死でノイローゼになった母、突然単身赴任する父、親友の父の死や心中騒動など、実加の周りでは様々な事件が起こる。そして実加が姉の年齢に近づいたとき、父の浮気が発覚し、実加がなにげなく発した一言で姉の声が聞こえなくなってしまう…
(ウィキペディアより要約引用)

 赤川次郎の小説「ふたり」。1991年に監督・大林宣彦で映画化。「新・尾道三部作」の第一作にあたります。映画は原作にほぼ忠実で、赤川自身でさえ限りなく近いので驚いたといわれていますが、大林宣彦ならではの微調整は確実に行われています。
 その代表的な例が、この内田祐子。小説では、「東京」の家族、「札幌」の愛人ですが、映画では、舞台(家族)は当然「尾道」。そして、内田祐子は「小樽」から訪ねてくるのです。内田祐子を演じたのは、ピンクレディ解散後の増田惠子(ケイちゃん)でした。

 いやー、迫力、ありすぎ。

 大林映画は音楽が久石譲と決まっているから、それだけでもけっこう重たい。さらに、この映画の場合は死んだ姉・北尾千津子の役を中嶋朋子、妻・治子の役を藤純子がやっていることもあって、こちらも重たい。で、トドメが内田祐子役のケイちゃんなのでした。(もうケイちゃんという面影ではなかったけれど。あの役者は白石加代子だとずーっと思っていた…) なんか、大好物だけをずらーっと並べ立てられたテーブルみたいで、胃の弱い人には疲労困憊の映画という印象でした。あっ、これは褒め言葉ですからね。映画だったら、それくらい徹底的にやらないでどーするというのが私の基本的立場です。赤川小説の淡泊な味付けだけだったら、私は「十二月の札幌」としてもとりあげなかったと思います。

 とにかく、この物語は、内田祐子が父を追いかけて「小樽」からやってくるから、凄いのよ。