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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



十一月の札幌
 
 

 凍てつく札樽国道。ここから私の旅が始まる。永遠に立脚し刹那に努力するべしと父は教えた。遠い昔の神々にならう宗教は今日の悩みの河に合流してゆく。(数行カット) 伯母は猫を捨てなければ養育しないと言った。とらを捨てるよりおばさんを捨てる。札幌へ帰って丈君に相談しよう。とらは私の決心に賛成した。(数行カット) 闇のむこうに続く札幌への道、歩いて辿りつけるかどうかしらないが着のみ着のままで出てきた。(数行カット) 父母が突然死んで私の将来は転覆したんだもの。ここから先は頑張るのみ。とら、どうしたの? どこへ行っちゃったの。スーッと一台の車が止まった。とらはフロントワイパーにしがみついている。ごろごろごろとうれしそうに。降りてきた人に目を疑った。やせた肩、すらりとした背丈。
「急にとび出してきてびっくりしたよ、轢いてしまうところだった」
(佐々木丸美「風花の里」)

 国道5号線(「札樽国道」とはずいぶん古い言い回し!)張碓のトンネル手前で停まる乗用車。車から降り立つ一野木昌生(いちのぎ・まさお)。小浜星玲子(こはま・れいこ)が困った時、どこからともなく現れる謎の王子様… 上の文章の言いたいことは、おそらく、これだけ。

 こんな数行で済むあらすじを抜き出すのに、この何倍もの修飾文章をバッサバッサと切り捨てなければなりませんでした。なんで、こんなに、少女マンガの背後の星や花みたいに修飾語を書き連ねるのだろう、佐々木丸美という人は。

 例えば、冒頭の「凍てつく札樽国道…」を導き出すために使われる修飾は、こんなです。

 遙かな空に一番星、友情の契りに添えて約束星。朝に涙、タベに微笑、心に糸車をかざし幾百幾千の徒花の果てまでも。星は静かに巡りきて、人々は浮かれ歌い己が悪の花粉に酔いしれる。やがて夜毎の夢に使者は立ちよりぬ。まだその日は遠いけれど、震えと飢えと争いとをたずさえて伝令の使者は発った。蓬かな頂きの神々の祭典(オリンピア)より。
(同書より)

 バブルだなぁ。(こんな時代もあった…)

 あの人たち、今頃、何やってんだろ…