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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



十月の小樽 (三)
 
 

 フェリーボートが港を出た時、海面は濃霧に包まれ、視界は白く閉ざされていた。
(こんなに霧が深かったら、船と船とが衝突するんじゃないかしら)特等室の船窓から外を見て、ノリオはそんな心配をしていた。
(筒井康隆「七瀬ふたたび」)

 フェリーはどこへ?

 それが、なんと、小樽なのでした。去年、NHKがやったドラマ「七瀬ふたたび」の解釈が超ぶっ飛んでいて、自分の読んできた「七瀬」理解が大きく揺らぎました。で、七瀬三部作をもう一度読み直した次第です。で、発見した。なんと、船が向かっているのは小樽じゃないの!

 「あなたはなぜ北海道へ行くの。今時分、観光旅行でもないでしょう」
 「ええ。観光旅行じゃないわ」どう言ったものかと迷い、七瀬は少しどぎまぎした。
 七瀬たち三人の超能力者が北海道へ旅に出た目的は、自分たちの隠れ家を捜すためだった。年頃の娘、四歳の男の子、黒人青年といった、誰が見てもおかしな組合せの三人が、人目の多い都会で一緒に生活していれば、やがては世間から疑いの眼を向けられるに違いなかったし、それが過去の事件や、ひいては三人の秘密の発覚という致命的な事態に発展するきっかけになるかもしれなかったから、なるべく早く、あまり人目の届かぬ山奥かどこかに一軒家を持ち、いざという時の避難場所として確保しておく必要があったのである。また、常に気を張りつめている日常から逃れ、時どきやってきて心の凝りをほぐし、休養するためでもあった。
(同書より)

 ああ、漁(すなどり)藤子さん! お懐かしい!
 年頃の娘(七瀬)、四歳の男の子(ノリオ)、黒人青年(ヘンリー)たちにはない、第4のテレパス登場。「七瀬ふたたび」は、この漁藤子さんと、もう一人「ヘニーデ姫」こと真弓瑠璃との邂逅によって爆発的に加速します。

 小樽を通過した七瀬たちはどこへ?

 その地の名前をいうべきかどうか、私は今でも迷っています。その名を口にするのがちょっと怖い。(やはり、いえない…) あの、「柔らかな頬」の五歳の女の子も失踪したところ。