Welcome to SWAN 2001 Homepage


 
 
かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



三月の小樽
 
 

 山田風太郎が晩年を過ごした聖蹟桜ヶ丘。若き日の吉本隆明が結核療養中の姉を訪ねていった聖蹟桜ヶ丘。その東京郊外・多摩市桜ヶ丘、都立鷹ノ台高校の氷室洋二は、少年期に剣道師範だった父から受けた異常な修行によって、命のやりとり以外、生きる快感を見いだせない高校生となっていた。酒も女ももはや一人前。今日も鷹ノ台高校には、全国から結集したあらゆる格闘技の猛者たちとの死闘が続く…
 というのが、真樹日佐夫原作、影丸穣也画のマンガ「ワル」です。1970年、「少年マガジン」の連載。真樹日佐夫は、梶原一騎の弟。兄弟そろって劇画原作で荒稼ぎをしていました。今思えば、学生服の背中に木刀を仕込んだ高校生が教室の後ろに座っているなど、ほんとに文字通り「マンガ」でしかないのですが、当時は「団塊の世代」が大学を通過中。全共闘が満開の時代なので、なにかしら、「団塊」の前と後ろの世代で、「団塊」への反感をベースに奇妙なタッグが形成されたのではないかと考えます。東京郊外・聖蹟桜ヶ丘の高校生という設定は、ほんと、あの時代でしか思いつかないような設定。(吉祥寺や高円寺あたりで青春していた地方出身大学生たちへの反感でしょうね)
 「新書ワル」は、その青年編。物語のスタートこそ聖蹟桜ヶ丘ですが、のち、都内・新宿での大立ち回りへと舞台は移ります。その新宿編にも飽きたら、今度は全国行脚編へとお約束の展開。萩〜博多〜那覇と進み、次は一転して札幌へ。小樽が登場するのは、その「新書ワル」のラストです。七十年代という時代のフィナーレが小樽というのは、なんたる光栄か。

 「いま 出て行った キャデラックを 追ってくれッ」
  (札幌自動車道)
 「石狩湾だな こりゃ 確か」
 「行き先は 小樽だね どうやら」
 「小樽?」

 「札樽(さっそん)自動車道」を「札幌自動車道」と言ったり、その札樽自動車道には観光客のバイクが止まっていたり(冬だぜ!)、突っ込みどころ満載ですが、まあ、東京の人にそれを言ってもしょうがないか。高島岬での暴力団との殲滅戦。(展望閣に泊まったのかな?) ラストの、前鷹ノ台警察署長・磯貝慎太郎との決闘の舞台は旭展望台下でした。

 ああ、やっとこさ、気恥ずかしい七十年代が終わったという気がする。