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かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ
 
 



一月の小樽
 
 
 
 
 明治四十一年一月元旦の石川啄木。

「起きたのは七時頃であったらうか。門松も立てなければ、注連飾もしない。薩張正月らしくないが、お雑煮だけは家内一緒に喰べた。正月らしくないから、正月らしい顔した者もない。/廿三歳の正月を、北海道の小樽の、花園町畑十四番地の借家で、然も職を失うて、屠蘇一合買ふ余裕も無いと云ふ、頗る正月らしくたい有様で迎へようとは、抑々如何な唐変木の編んだ運命記に書かれてあつた事やら。」
(啄木日記 明治四十一年一月一日)

 なかなか悲惨な正月ですね。いつも頼りにしていた山本千三郎(姉トラが嫁いでいる)一家も、今は、岩見沢駅長となって遠く離れてしまっているので、小樽の街に何の身寄りもない啄木一家ではあります。親友・金田一京助に年賀状を書いている啄木の心境とはどんなものだったのでしょうか。

「さすらひ来し北の浜辺の冬は寒く候」か…