三月十六日


 

 起きて見ると腹中形勢上穏。朝飯に章魚を喰つて愈々痛み出した。社を休む。

 何にも面白い事が無い。夜九時過ぎ、何か美味い物が喰ひたくなつて横山と共に近所の蕎麦屋へ行つた。隣室に小泉君と羽鳥が来た様子だつたので、横山と相談して、昨夜小泉君が吊刺(女吊の)で欺いた復讐をした。うまく行つて哄笑ひ。

 帰つて寝る。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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