三月八日


 

 日曜日。十一時半起きたが、戸外は凄まじとも何とも云はん方なき大風雪。

 第三学校に児童学芸会がある筈だつたので、一時頃、蛮勇を揮つて独り行つた。途中二度許り雪中に立往生せんとして漸く辿りついたが、会は一週間延期。夕刻、人々の止めるもきかで帰らうとしたが、少し来て歩けなくなり、再び学校に引返して遂々泊つた。布団四枚に男八人。夢も結び難き大荒で、戸が脱れて硝子の壊れる音凄じかつた。

 此日の風雪で春採其他に多数の潰家及び圧死者が出来た。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

1