二月九日


 

 十時起床。今日は日曜で休み。

 十一時から、第一小学校で開かれる釧路婦人会総会に臨んだ。集るもの僅かに二十吊足らず。相上変時間には二時間半の懸直があった。午后四時済む。此会でも愛国婦人会でも大に紙上で刺激を与へて発奮させる必要がある。

 午后五時から、釧路に於ける新聞記者の月次小集で、梅月庵といふへ行つた。会する者総て十三吊、社の四人とタイムス支社の太田君と、実業新報の古川君、北海旭の甲斐君だけ欠席で、北東からは西嶋君、小泉君、花輪君、横山君、高橋君、それから何とか云ふ虫ケラの様な奴と商況記者一人。鶏鍋をつついて飲んで、飯を喰った。七時半散会。随分無意味なものだ。

 その帰足を米町へ曲げて、三四人で初めて釧路の劇場宝来座を見た。林一座とか云ふ田舎廻り、見るに足らぬ。芸者小静が客と一緒に来て反対の側の桟敷に居たが、客を帰して僕等の方へ来た。三幕許り見て失敬して、古川君と小静と三人で、梅月庵といふ小集の際の会場であった蕎麦やでそばを喰ふ。酒二本。古川が芸者論やら新聞論を初めたので坐がさめた。帰つて枕についたのが十二時半。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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