一月二十二日


 

 起きて見ると、夜具の襟が息で真白に氷つて居る。華氏寒暖計零下二十度。顔を洗ふ時シヤボン箱に手が喰付いた。

 日景主筆が来た。共に出社する。愈々今日から釧路新聞の記者なのだ。

 昨日迄に移転を了した新社屋は、煉瓦造で美しい。驚いたのは、東京で同じ宿に居た事のある佐藤岩君が三面の記者になつて居た事で、聞けば同君は此処に来てから料理屋の出前持までやつたとの事。モ一人は上杉儔といって、前中学教師、物理の先生とは寔に意外な話だ。

 職工のおとなしいに驚く。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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