一月二十日


 

                        於旭川

 曇天。十時半岩見沢発。途中石狩川の雪に埋もれたのを見た。神威古潭で夏の景色を想像した。午后三時十五分当旭川下車、停車場前の宮越屋に投宿。

 旭川は小さい札幌だ。戸数六千、人口三万、街衢整然として幾百本の電柱の、一直線に列んでるのは気持がよい。北海旭新聞を訪問した。

 知らぬ土地へ来て道を訊くには女、特に若い女に限ると感じた。其女は、十六許りの、痩せて美しい姿であった。

 日が暮れて白石氏も着いた。晩餐を済まして、“雪中行”第二信と手紙数本をかいて就寝。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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