一月三日


 

 朝、在原が、社宛に来た小山内君の「新思潮《を届けてくれた。そして例の小林寅吉が二三日中に首になる話をして、大に祝盃を上ぐべしとニコ/\して帰つた。

「新思潮《は誠によい雑誌である。附録に平木白星の「戯曲黄金の鍵《幼稚なもの、小栗風葉君の「七人目《左程の物でもない。岡田八千代女史の「白蛇《、この閨秀作者の将来は多望である。水野葉舟の「再会《、小説としては兎も角、自分の知つて居る事柄を書いたので、異状の興味を以て読んだ。与謝野といふ人の半面が躍々として紙面に表はれて居る。予は色々と新詩社の事を考へた。

<夕方、本田君が三>

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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