十二月二十九日


 

 今日は京子が誕生日なり。新鮭を焼きまた煮て一家四人晩餐を共にす。

 人の子にして、人の夫にして、また人の親たる予は、噫、未だ有せざるなり、天が下にこの五尺の身を容るべき家を、劫遠心を安んずべき心の巣を。寒さに凍ゆる雀だに温かき巣をば持ちたるに。

 一切より、遂に、放たるる能はず。然らば遂に奈何。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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