十二月二十八日


 

 夜、大硯君来り、西川光次郎等社会主義者の演説会に誘ふ。行かず。

 正宗白鳥君の短篇小説集「紅塵《を読み深更にいたる。感慨深し、我が心泣かむとす。予は何の日に到らば心静かに筆を執るを得む。天抑々予を殺さむとするか。然らば何故に予に筆を与へたる乎。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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