十二月二十七日


 

 大硯君来り談ず、君も浪人なり、予も浪人なり、共に之天が下に墳墓の地を見出さざる上遇の浪人なり。二人よく世を罵る、大に罵りて哄笑屋を揺がさむとす。「歌はざる小樽人《とは此日大硯君が下したる小樽人の頌辞なり、淵明は酒に隠れき、我等は哄笑に隠れむとするか。世を罵るは軈て自らを罵るものならざらむや。

 読淵明集。感多少。鳴呼淵明所飲酒。其味遂苦焉。酔酒酔苦味也。酔余開口哄笑。哄笑与号泣、上識孰是真惨。

 噫、剣を与へよ、然らば予は勇しく戦ふ事を得べし。然らずば孤独を与へよ

 人は生きんが為めに生活す、然ども生活は人をして老ひしめ、且つ死せしむるなり。予に剣を与へよ、然らずんば孤独を与へよ。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

1