十月二十二日


 

 三日が間はこれといふ為すこともなく過ぎぬ。社は暗闘のうちにあり、野口君は謹慎の状あらはる。

 この日は第二号編輯の日なり。主筆事務の在原と大喧嘩を初め、職工長速水解雇さる

 夜、恵比須亭の演芸会を見、かへりに大黒座に寄りて坐付作者花岡章吾と語り大に馳走になる。劇場楽屋は生れて以来初めて見たり、田舎廻り俳優は哀れなるもの、彼らが自堕落になるは主としてその境遇による。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

1