十月六日


 

 降りみ降らずみの空合いと怪しき一日なりき。

 向井君よりハガキ来る。松岡道庁の肥料検査の方に出仕したりと。猫の糞と肥料とは面白き事限りなし。

 今日より編輯局の給仕来る、年は十四の池亀ハル、おとなしければ皆で可愛がつてやる。

 夜、隣室の売ト者先生を訪ひ其著神秘術一巻を貰ひ、初号に当地有志の姓吊判断を書いて貰ふ事を頼む。心地少しく優れず、早く寝に就けり。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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