十月三日


 

 泥濘下駄を没せむとす。小樽の如き悪道路は、蓋し天下の珍也。

 社よりの帰途、野口君佐田君西村君を伴ひ来りて豚汁をつつき、さゝやかなる晩餐を共にしたり。西村君は遂に我党の士にあらず、幸に早く帰りたれば、三人鼎坐して十一時迄語りぬ。野口君と予との親交情は既に十年の友の如し。遠からず共に一雑誌を経営せむことを相談したり。

 社の校正にせむとて園田君に手紙出せり。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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