十月 ―小樽―

 十月一日


 

 遂に神無月は来れり。

 朝野口雨情君の来り訪るゝあり。相携へて社にゆき、白石社長及び社の金主山県勇三郎氏の令弟中村定三郎氏に逢へり。編輯会議を開く。予最も弁じたり。列席したる者白石社長、岩泉主筆、野口君、佐田君、宮下君(札幌支社)金子君、野田君、西村君と予也。予は野口君と共に三面を受持つ事となれり。

 夜、静養軒にて一同晩餐を共にし、麦酒の盃をあげたり。

 玉山なるせつ子の父より手紙来る。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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