朝小樽なるせつ子へ来札見合すべき電報を打てり。北門新報社に於ける予の後任としては、西堀秋潮君の推薦にかゝる新詩社々友園田愛緑君と内定したり。
この日より予が「梁川氏を弔ふ《の文北門に出づ、三回にて了る筈。
午後小栗君来る。
夜 向井君の室にて大に宗教を論じ虚無を論じたり。予は予の意志二面観に出立する哲学を以て最高の思想と断定せり。予は他の人々の頭脳の何故明晰ならざるかを怪しまざるをえず、
※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人