九月十四日 土


 

 午前四時小樽着、下車して姉が家に入り、十一時半再び車中の人となりて北進せり、銭函にいたる間の海岸いと興多し、銭函をすぎてより汽車漸やく石狩の原野に入り一望郊野立木を交へて風色新たなり。時に稲田の穂波を見て興がりぬ。

 午后一時数分札幌停車場に着、向井松岡二君に迎へられて向井君の宿(北七条西四ノ四田中方)にいたる、既にして小林基君来り初対面の挨拶す、夕刻より酒を初め豚汁をつつく。快談夜にいり十一時松岡君と一中学生との室へ合宿す。予は大に虚偽を罵れり赤裸々を説けり、耳いたかりし筈の人の愚かさよ、予は時々針の如き言を以て其鉄面皮を刺せり、

 午后一時数分札幌停車場に着、向井松岡二君に迎へられて向井君の宿(北七条西四ノ四田中方)にいたる、既にして小林基君来り初対面の挨拶す、夕刻より酒を初め豚汁をつつく。快談夜にいり十一時松岡君と一中学生との室へ合宿す。予は大に虚偽を罵れり赤裸々を説けり、耳いたかりし筈の人の愚かさよ、予は時々針の如き言を以て其鉄面皮を刺せり、

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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