九月十一日


 

 午前仮事む所に大竹校長を訪ひて退職願を出しぬ。座に橘女史あり、札幌の話をきけり。高橋女史に逢へり

 午后小林茂君来り、大井正枝君来れり。吉野君と夕方谷地頭に散歩し、浮世床といふ床屋にて斬髪す。

 夜岩崎君宅に招かれて、吉野並木二君も会し、大に飲めり。牛肉と玉葱の味いとうまかりき。予の出立は明後日午后七時の滊車と決しぬ。

 


※テキスト/石川啄木全集・第5巻(筑摩書房 昭和53年) 入力/新谷保人

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