二六五 四月二十六日荻の浜より 宮崎大四郎宛


 

多謝。

今朝七時前投錨、荻の浜は詰らぬ所だが、頻りに耳に入る鶯の声の有難さ。

花は紅梅、桃に桜少し許り、崖の竹藪の下の椿の花もうれしい、

十二時錨を抜いて初夏の国に向ふ。

御尊父様外皆様へよろしく。

  二十六日午前一時       石川啄木

 宮崎大四郎様

 


※テキスト/石川啄木全集・第7巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人

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