多謝。
今朝七時前投錨、荻の浜は詰らぬ所だが、頻りに耳に入る鶯の声の有難さ。
花は紅梅、桃に桜少し許り、崖の竹藪の下の椿の花もうれしい、
十二時錨を抜いて初夏の国に向ふ。
御尊父様外皆様へよろしく。
二十六日午前一時 石川啄木
宮崎大四郎様
※テキスト/石川啄木全集・第7巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人