二二四 十一月十四日小樽より 天峯沢田信太郎宛


 

戦況第三報 十四日午后十時

家に帰って此手紙をかく、

今回の戦所謂天祐也

主筆は多分明日と明後日と出勤して無何有の郷に御栄転となるならん、それにつき主筆の居るうちに兄に来られて彼(いささ)か可哀相につき、十八日か十九日に赴任して来て頂きたく候、そのうちは僕と佐田君にて孤城を守る、兄と顔合せをさせぬだけが我等の敵将に酬ゆる好意に候、尤も小樽にはいつ来らるるも兄の御都合次第、実を云へば成るべく早く万事お話したいのに候、赴任前に大通西三丁目に社長を一度御訪問遊されては如何 札幌支社その他は兄来ると同時に起るべき第二次の策戦なり 万才

                       啄木

 


※テキスト/石川啄木全集・第7巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人

1