二〇三 九月九日函館より 向井永太郎宛


 

二度目のおハガキ難有拝見仕侯、御厚志の段々多謝、札幌行と決心したり。但し辞表を出して今月分の月給を貰つた上でなければ旅費一文もなき次第、それから学校の方の仕事の都合もあり、且家内一しよにつれて行つて小樽の姉の所に当分置くつもりに候が、そのため多少の時日を要す、二十日頃に行つても社の方でそれ迄待つてくれるでせうか、此段御返事を願上候、右でよければ、学校の方ヤメルに少し掛引有之候間来る十四日に左の電報打つて下さい、電報料お立掛乞ふ 松岡君によろしく

 キマツタ三〇エンスグコイ

  九日午後               石川啄木

 向井永太郎様

 


※テキスト/石川啄木全集・第7巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人

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