小樽・わが町

                     岸 誠


 

  あまりに多くの魂のかけらを

  僕はこの町に撒き散らしすぎた

        カーリル・ギブラン

 

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銭函の駅は波打際にある

千歳空港から札幌を経て

小樽へ向かう列車が

銭函の駅を出ると

突然海が目の前にせまる

石狩平野の広がりが消え

海の中に小樽がはじまる

 

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どこからでも海が見える

公園や学校や坂の上から

小樽駅を出ると

道は一直線に海へつづく

倉庫と運河があり

防波堤が並び

赤と白の灯台が残る

どこまで行っても

決して平坦でない道

めぐりあうのは

若き日の魂のかけら

 

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手をのばせばとどく

こんなに近くまで

空が降りてくるのは

どれだけ優しくこの坂の町を

山が抱きかかえてきたからか

故郷の尾根を歩けば

歳月の営みの上思議に

何故かこころ乱れ

落葉松の梢に

北国の秋が結晶しはじめる

 


※テキスト/岸誠詩集「北風の港―小樽わが町《 入力/新谷保人

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