編輯日誌 (十二日晴)
石川 啄木
主筆緑子優しき名刺封じたる南信一封を懐にして思ふ所あるが如し、小南子、大木頭子相見て時に笑を忍ぶるは不識、何事をか思出したる衣川子材料頗る豊富、一隅に割拠して頻りに筆を執る、南畝氏甲斐氏風の如く来り風の如く去る、午後の日光窓より入りて大洋燈(だいランプ)豆洋燈(まめランプ)の光燦たり、大木頭斧を揮つて編輯を締切る、時に午后三時半。
(釧路新聞 明治四十一年二月十三日)
底本:石川啄木全集 第8巻
筑摩書房
1979(昭和54)年1月30日初版
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入力:新谷保人
2006年2月13日公開
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