小樽南廓の景気
石川 啄木
北廓の新設に狼狽(うろたへ)出した結果寄々協議を重ねて、函館あたりから盛に新妓を輸入し荘厳(いかめし)い大門を作り電灯に花を咲かせたる当区南廓にては、心配の甲斐ありてメッキリ繁昌の由なるが、先月中一夜の春に浮かれて生血を絞られた人数三千三百四十六人、其遊興費一万千五百九十七円八十六銭にて、楼数は現在二十三軒ありと。
(小樽日報 明治四十年十二月七日・第四十号)
底本:石川啄木全集 第8巻
筑摩書房
1979(昭和54)年1月30日初版
|
入力:新谷保人
2005年12月7日公開
|