共済会の組織
 
石川 啄木
 
 
 
 
 旅は道伴世は情、互ひに助け合ふのに悪い事あるべき理(ことはり)なしに、此度予め会員共同の貯蓄法を設け、之が会員又は其家族にして死亡したる時は其葬具一切の用度を処弁すると云ふ目的にて共済会なるもの組織せられたり。創立者は小樽区南浜町六丁目一番地小樽博善株式会社にて、会員を四等に分ち何れも三十六ヶ月間に会費を完納する規定にて、一等は毎月一円宛、二等は五十銭宛、三等は廿五銭宛、四等は十五銭宛の掛金なるが、第一回掛金の日より満三ヶ月以上継続会費納付したる時は仮令(たとへ)三十六ヶ月以内に死亡すと雖ども必ず葬具一切を借貸し、三十六ヶ月にして会費を継続完納したる時は其翌月より年五分の利子を附積し、死亡すれば元金は葬具に当て其利子は香奠として送付する由。生命保険のある世の中なれば敢て縁起が悪い事でもなし、一寸気のつかぬ思付なるが、不時の事に狼狽(まごつか)ぬ用心なれば加盟し給ふべし。但し小樽在住の人に限り、申込の際重病患者あれば謝絶する由。
 
(小樽日報 明治四十年十一月十九日・第二十五号)

 

  底本:石川啄木全集 第8巻
    筑摩書房
    1979(昭和54)年1月30日初版
 

  入力:新谷保人
  2005年11月19日公開