明年度の区立小学校
石川 啄木
小樽区内区立小学校十校(尋一、尋高(じんかう)併置九)、現在に於ける学級数は尋常科七十七、高等科(かうとうくみ)四十四、計百二十一学級にして、第一学期末に於ける児童数は、
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男 |
女 |
計 |
尋常科 |
二、九一〇名 |
二、五四三名 |
五、三五三名 |
高等科 |
一、五四四名 |
一、〇五九名 |
二、六〇三名 |
総 計
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四、四五四名
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三、六〇二名
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七、九五六名
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なるが、義務教育年限延長実施と共に、明四十一年度よりは尋常科六学年となり、高等科は二学年として、現在尋高併置九校中第四学年まで設置せる稲穂、同女子、量徳(れうとく)、同女子花園の五校にのみ併置し、他の五校は単に尋常小学校とする由なるが、今当局の調査にかゝる明年度児童収容予定調を見るに、
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学級数 |
児童数 |
尋常科 |
一一五 |
八、〇〇八名 |
高等科 |
二一 |
一、二四四名 |
計
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一三六
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九、二五二名
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にして、尋常科に激増し高等科に減少したる観あるも、事実は現在高等二学年まで尋常科となり、高等科といふは現在三四学年のみなれば、実際の増加は、
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学級数 |
児童数 |
尋常科 |
一一 |
一、〇〇一名 |
高等科 |
四 |
二九五名 |
計
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一五
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一、二九六名
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となる訳なり。而して十五学級千三百名の人員と云へば優に一大校舎を充すべく、且つ既往に徴するに、区の膨張に伴うて尋常科のみにしても毎月百名以上の増員ある状況なれば、現在にてさへ辛うじて八千の児童を収容し居る各学校は如何にして此急激なる増加に応ずべきか、当局には無論充分の成算あるべきも、当区の教育は今迄も二部教授などいふ消極的方針を採らず終始積極的に発達し来れるなれば、此際に処するにも当局と区民と能く一致して一日も早く新条令に基く普通教育の完整を期すべきなり。
(小樽日報 明治四十年十月十五日・第一号)
底本:石川啄木全集 第8巻
筑摩書房
1979(昭和54)年1月30日初版
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入力:新谷保人
2005年10月15日公開
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