スワン社HP Northern songs 2001年6月23日号

 
 
エンジェル・イン・ザ・ダーク
《速報「道の駅」2001 第3回》
 
新谷 保人
 

 今年の「道の駅」は、水面の《小樽》というポイントに一滴水を垂らしたように、見事に《小樽》から同心円を描いて「道の駅」ポイントが埋まって行ってますね。今回のルートで、特にそんな感じになってきました。かっこいいでしょう。47「室蘭」の行き止まりを、なんと37の「マオイ」につなげる!という荒技が今年の売りです。
 昼の12時に室蘭から苫小牧方面に向かった時点で、43「サラブレット新冠」方面車を向ける作戦もあったのだけど、ラジオのニュースで、日高の海岸線で崖崩れがあって道路が不通になっている…(こんな天気がいいのに「崖崩れ」?)という情報が入って、急きょ「馬追(マオイ)」に変更になりました。

 

6月23日(土)
(小樽)→(京極/水汲み)→33.フォーレスト276大滝→39.そうべつサムズ→65.だて歴史の杜→47.みたら室蘭→37.マオイの丘公園→1.三笠→26.ハウスヤルビ奈井江→58.たきかわ→(札幌/実家に配達)→(小樽)

 

 小樽からの同心円…と考えてゆくと、次回が、3の「富良野」から日高の海岸線に降りてゆくようなコースになるのでしょうか。まあ、別に意識して近場からじわじわポイントを埋めてゆく作戦をとっているわけではないので、ある日突然「知床、行ってきた」とかなのるかもしれませんけれど。もともとの私は、その手の、南進する北朝鮮人民軍の背後をついてマッカーサーが仁川(インチョン)上陸作戦にうって出た、「朝鮮戦争」の1952年に生まれた人なんですけどね。

 なかなか遠出できないのには理由(わけ)がある。それは、コンサドーレ札幌がJ1に上がってしまったからなんです。
 J2時代とちがって、毎試合、かならずどっかのテレビで放送されるのはありがたいのだけれど(ほんとに去年は「前畑がんばれ!」をラジオの前で聞いている日本国民のようだった!インターネットのチャットで刻々の試合経過を追って行くんだけど、なんか惨めでね… 同時刻、衛星第一で「ジェフ市原VSサンフレッチェ広島」とかやっていたりすると、「こんなもん誰が観てんだよ!責任者出て来い!」とか毒づいていたもんです…)、いや、ほんとに、試合中継放送があるのはありがたいことなんだけれど、もう今年の3月からこっち、土曜日は確実に丸々一日拘束されることになってしまったのね。
 試合の1時間前からテレビの前で正座しています。(笑) で、勝てば勝ったで「祝勝会」。夜のサッカー・ニュースやスポーツ・ニュースも観ないわけには行かないし、負ければ負けたで「残念会」ですから、やはり酒が入る。試合中もサッポロ・クラシック飲んでますから、なんか、土曜日は昼間っからぐうたらしていることが多くなりましたですね。いかんなぁ…とか思ってはいるんだけど、なんか打つ手なし状態。さらに、5月の連休で、朝っぱらから始まるマリナーズ…というのも味をしめてしまって(昭和の草野球の懐かしい匂いがして大好きです!)ますますテレビの前に釘付けですね。

 
 
北海道地区「道の駅」連絡会
 

 そんなわけで、なかなか「道の駅」の方がお留守になっている。日曜の朝から夕方の間でしか動き回れないから、自然と近場で済ますことになっているんですね。どうなるのかなぁ…サッカーがお休みの8月にでもなれば、なにかちがった目も出て来るのでしょうか。私は日本のプロ野球も、ナイターという興業形態も大嫌い(夜やるスポーツなんてスポーツじゃねえ!)ですから、夏休みなんかは有利かもしれませんね。同心円のいちばん外側、去年「灯台ラリー」でやったポイントを全部8月に残しておいて、8月のある日から「全駅制覇するまで小樽に帰ってくるな!」ツアーでもやればいいのかなぁ。
 

 室蘭を通る時、いつも気になっていた「港の文学館」。ついに、今回は、中に入ってみました。洒落た名前ですが、つまりは「室蘭文学館」ですね。たぶん、ほとんどの人は読んだことがないのではとも思いますが、「八木義徳」とか「葉山嘉樹」といった作家の資料を集めている文学館です。うーん、地味… 「室蘭文学絵はがき」というのを買ったのですけれど、そこに出ていた「室蘭文学碑マップ」のラインナップを見ても、「安部一路」「進藤千晶」「八木義徳」「並木凡平」「佐藤守雄」「葉山嘉樹」「長谷川正治」「工藤仙二」「長木谷梅子」「山口青邨」…と、ちょっと気が滅入ってくるような並びです。(なんか埼玉とか群馬の山間の寒村に迷い込んだみたいだ…)

 ちょっと面白かったのは建物。なんか、壁の凹凸が多いのと、天井が低いのが印象的です。いつも小樽の文学館を見慣れているので、なにか、室蘭は、室内に異常に展示物が溢れかえっているような気がします。というか、学芸員がやった展示じゃなくて、図書館司書が作った展示みたいなんです。私も、埼玉県のネットワーク時代、他館から借りてきた本を交えて盛大に資料展示やってましたけれど、ちょうどあんな感じ。
 小樽や函館の文学館は、建物の前身が「銀行」なんだそうです。対して、室蘭は、前身の建物が「船員ホテル」なんだそうで、それが、来館者に、ちょっとエキゾチックな「港の」文学館イメージを与えているのではないでしょうか。白亜の建物に外国船の船員が出入りしていた…なんて、ずいぶんカッコいい話じゃないか。
 元「銀行」に、元「船員ホテル」… それにつけても、こういうことを耳にすると、いつも反射的に思うのは、尊敬する我らが郷土の大詩人「吉田一穂」のことです。記念館が「小学校の実習教室」なんですよ! それでも、廃校になった校舎まるごと「記念館」…とかいうのならまだわかる。けれど、積丹の古平町のはそうじゃない。現役の、普通の小学校なんだもの。その、空き教室。町中、車でグルグルまわって記念館探して、結局、場所がわからなくて町役場で聞いたら、小学校の空き教室だと言う。役場の人に電話してもらわないと学校の建物にも入れない。5分後に小学校に着くと、廊下の向こうから教師が走ってきて、「今、職員会議中だから、ひとりで勝手に見てください」とか言われて二度ビックリですよ。「吉田一穂」だぞ…いいのか、これで!

 古平町のことを思い出して、いきりたってしまった…「港の文学館」の話だった。「道の駅・みたら室蘭」の話であった。すみません。でも、ほんとに誰か、きちんとした「吉田一穂文学館」、作ってくれないものかなぁ。(←しつこい…)
 

 最初のところで、47「室蘭」の行き止まりをなんと37の「マオイ」につなげる荒技…と書いたけれど、これ、よく考えたら荒技でも無謀でも自暴自棄でもなんでもない。室蘭からの今回のルートは、つまりは「札幌本道」ですからね、明治初期の駅逓(えきてい)の道をきれいになぞった由緒正しい北海道民の歩んだ道ではあるんです。元祖「道の駅」なわけです、これは。
 「札幌本道」は、明治6年、北海道に初めて通った「車馬道」です。コースは、函館をスタートして森、森から船で内浦湾を横切ってしまって室蘭へ。室蘭から苫小牧を経由して札幌へと続く「車馬道」です。この当時の「馬」は、今で言うところの「車」。当時のモータリゼーションの最高峰ですね。ですから、「札幌本道」は当時の「東名高速」というか「東海道新幹線」というか、北海道の明るい未来を約束する大動脈ではあったのです。その大動脈の途中で疲れたらひと休み。馬を休め、ついでに人間もリラックス。食事して、風呂入って、酒呑んで、ガーッとひと眠り…するところが「駅逓」でした。
 現在、北海道最古の「駅逓」が札幌に行く途中の北広島市に残っています。この北広島の駅逓は別の意味でも有名。なんと、ここが「Boys be ambitious !」発祥の地だったのですね。アメリカに帰るクラーク博士を見送りに、札幌農学校の学生たちは札幌市郊外のここの駅逓まで一緒にやって来たのでした。で、ついに、ここでお別れ。その時、クラーク博士は学生たちに言ったのですね、青年よ大志を抱け!と。
 それにしても、幹線道路を造っているのに、室蘭から森(函館)までは、目の前の海を突っ切ってしまえばいいんだよ!なんて発想をする奴が、やっぱり明治6年にもいたんですね。私もそう思います。この白鳥大橋がそのまま森や砂原町にまで続いていればいいのに…って。だって、目の前に駒ヶ岳が見えているんだもん。クラーク博士のおっしゃった「ambitious」って、意外とこんな感じだったのではないかと思う今日この頃です。「大志」と訳すとカッコよすぎてなぁ。「一発逆転」とか、「Will be back !」(笑)とか訳した方がいいんじゃないのか…

 

 てな、アホなことを考えている内に、北広島から馬追方面へ右折。このルート、時間がかかるんですけれど(国道36号がいつも大渋滞)、私は、ここで曲がって「マオイ運河」沿いに行くのが好きなんです。「運河」っていうと、いつも小樽の運河のことばっかり言われるけれど、私は、小樽のあれを「運河」だと思ったことはないですねえ。ただの港の堀割にしか見えない。ディクスン・カーやターナーの絵でイメージ膨らませてきた身には、なんか、こっちの方がイギリス正統の「運河」っぽく感じたりはするのです。
 また「ambitious」話題になるけれど、その昔、私が子どもだった昭和の高度成長時代には、ほんとに苫小牧から札幌・石狩町までをスエズ運河みたいにぶち抜いて、太平洋と日本海をつなげてしまおうという列島改造計画がありましたですね。その後、このアイデアはどうなったんでしょう。オイル・ショックか何かで計画も吹っ飛んでしまったのでしょうか。「とんでも本」じゃないけれど、いつか、北海道に来た内地人や外国人たちが考えた歴代の「とんでも計画」を並べた本ができると面白いんですけれど。「ウラ『北へ…』」って感じかな。

 その、北海道新聞が日曜版で連載していた『北へ…』ですけれど、つい先日、連載第100回を迎えて無事に最終回となりましたね。いや、お疲れさん。勉強になりましたです。100回目の最後のトリ、誰で来るんだろう…と関係者(笑)の間では大変な話題でした。第1回が「宮沢賢治」だったから、私は、最後は意外と直球勝負で来るんじゃないかとか思っていました。「クラーク博士!」などとほざいていたのは私です。
 いや、最後まで変化球ですよ…という意見もありました。「三波春男」で勝負!と言われると、うーん、ちょっと負けそう。「クラーク博士」なんて、ちょっと平凡すぎたかしら。

 ふっふっふ、最終回が誰だったのか、内地の人は「北海道新聞」読めないから可哀想ですね。もうじき、北海道新聞社が『北へ…2』を単行本化すると思いますので、それまでお待ちを。「今明かされる衝撃の結末」なーんちゃって。(けっこう「こんな技、ありかよ?」というような最終回でした)

 『北へ…2』が出版されるまでのしばしの間、同じく北海道新聞社が発行したブーム便乗本、『全ガイド味めぐり北海道道の駅』でも読んでいてください。ついに出ちゃいましたよ、「道の駅」本が!
 そろそろ潮時なのかなぁ… 最近、どこの道の駅に行っても、スタンプ帳、5冊も6冊も抱えたようなウザイ連中もよく見かけるし。冗談ではなく、モロの「スタンパー一家」も目撃したし。
 テレビの交通事故ニュースで、大破した車の助手席に散らばる「道の駅」スタンプ帳…なんて映像が出る日も近いような気がする。「事故にあった新谷さんは、道の駅スタンプをとるため、勤務終了後、一睡もしないで知床方面へ夜通しドライブをしている最中でした」なんてアナウンサーに言われた日には、ほんと末代までの恥ですからね。ルーズソックス、ガングロの写真を子どもに引っ張り出されて、「ママ、なに、これぇ?」とか言われているようなもんだ。

 
 

 
2001年6月23日号 あとがき

■サッカーのこと書き出すときりがないから「読書会BBS」などでは遠慮することにしているんです。でも、これは、あんまりおもしろいから書いちゃいますね。土曜の朝方、「道の駅」ドライブに出かける直前に夢を見ていたんです。これが、なんと、「ワールドカップ決勝の横浜のチケット、当たったよ!」という夢なんだけど、この吉報を持って私の勉強部屋に飛び込んできた人が凄い… なんとTOKIOの長瀬だったんだもんね。

■いやー、何がどうして「TOKIOの長瀬」なのか、全然わからない。もちろん私、TOKIOのファンでも何でもないっす。テレビの歌番組なんか見ないし… 前の晩、ワールド・ユース「VSアンゴラ」戦のビデオを見ていましたけれど、そこに出ていたコンサドーレの山瀬(←最近ご贔屓の若者)が「TOKIOの長瀬」に文字化けした…なんてことは、あるわけないか。なんなんだ。長瀬は「札幌ドームの3試合も全部当たったよ!」なんて涙がちょちょぎれるような嬉しいことも言っていたのだけど、どうか、どうか正夢になってくれないものか。

■ワールドカップは1人で6試合まで申し込めるのですけど、私、「札幌」の3試合と決勝戦の「横浜」、あとの2試合は「埼玉」と「大阪」の準決勝戦を入れておきました。ほんとに「横浜」のチケット(←8万円の席なんだよ!)当たったら、私は行きますからね。「toto」話題、一切「Northern songs」に書いたことはありませんけれど、やることはすべてやっています。8万円のチケット、横浜のホテル代、「toto」以外に金を稼ぐいったいどういう方法があるの?っていう心意気です。1億当てて、「横浜」に使った以外のお金は、全部「図書館ネットワーク」に注ぎ込んでやるよ!っていう心意気ですとも。

■「札幌」の3試合は全部予選リーグです。もう、今からどこの国が「札幌」のリーグに入るのか、わくわくドキドキですね。ヨーロッパから1、南米から1は確実ですから、問題は、その「1」がどこの国か?です。贅沢言わせてもらえば、予選リーグ段階で「ポルトガル」や「アルゼンチン」戦を観て、また決勝戦でそのチームがやってる試合を観る…というのが理想ですけれどね。「日本」チームはシンジくんが大好きな埼玉県民にあげるから、札幌には「カメルーン」とか何か強力無比なインパクトの国がやってこないかな…とかも思ったりする。本場イングランドの「フーリガン」というのも、見たいような見たくないような…<新谷>