スワン社HP Northern songs 2001年5月20日号

 
 
後志ラウンド
《速報「道の駅」2001 第1回》
 
新谷保人
 

 あまり明確な意志もないままに「道の駅2001」が始まってしまった。

 日曜日、札幌の実家に届けものの用事があって車で出なければならなくなり、それならば昼に大通り公園でライラックでも見てこようかな…と思い、朝早く小樽を出ました。
 やっぱり、この「朝早く」ってのがなかなかくせ者で、今、夏至に向かって北海道は朝夕ともどんどん日が延びていますからね、一年中でいちばん美しい季節なんですよ。内地はそろそろ梅雨入りの時期ですけれど、北海道には梅雨はない。内地っぽい「梅」「桜」にまつわる大騒ぎもひととおり連休のあたりで終わり、いよいよ花も緑も「北海道バージョン」(と私が勝手に呼んでる)の開幕です。
 その基調は「白」と「紫」(若干「バイオレット」かな…)の色でしょうか。北国になるにつれて、緯度が高くなるにつれて、なにかしら、パープル系濃淡の草花が多くなってくるような印象があります。で、反対に、南国系の黄色や珊瑚っぽい紅の花があまり見かけなくなるというか、気にならなくなる…というか。彩りの妙とでも言いましょうか、この季節の札幌の街ならば、じつは、かなりお薦め品です。パリやマドリッドやアカシアの大連にだって、そうはかんたんに負けないぞ。(どの街も行ったことないけど…)
 町中を歩いているだけで楽しい。ポプラやアカシア並木の新緑の間から朝の青空が見える。アカシアの白い花、そして、淡いバイオレットのライラック。また、地面にすずらんの白。広い道路。目線を振り切らない適度な高さのビルディング。視界を隈どる遠くの山なみ。乾いた空気。重たくかさばるコートももういらない。そして、靴で「土」や「アスファルト」の上を歩く喜び。

 この「土の上を歩く」嬉しさって、内地の人にはなかなか上手く伝わらないんですけれどね。

 冬の間、私たちは、「土」の上じゃない、「雪」の上を歩くわけです。雪の街路でいちばん注意しなければならないことは、後方に尻もちのような形でクルッと転ばないこと。雪(氷)の上でツルッ!ですから、勢いがついたまま、後頭部を凍った路面にガン!と打ちつけてしまうのが最も怖い。頭部の後ろは無防備ですからね。前に転べば、手とか腕とかで庇うこともできるのですけど。
 ですから、この危険を避けるために、北海道の人の冬道の歩き方は、身体の重心のかけ方が内地とちがうんです。坂道を下に降りてゆく時の歩き方といいましょうか、地面との接点は「踵」の方から入って行きますし、身体の重心もたぶん「腰」から下の方にかかっていると思う。これは、「前に進む」という歩きの基本から考えると、かなり不自然な身体の使い方になるわけです。難しい身体の動かし方とも思えるでしょうが、こっちに来れば、3歳の子どもでも80歳の老人でも自然にやれてます。ただ、無理な体勢で前に進もうとしているわけですから、やっぱり身体はどっと疲れますね。
 一年に数度か、東京でも雪が5pとか8pとか積もったりすることがあるでしょう。(8pだと、かなり「大雪」かな) テレビ・ニュースなんかで、よく通勤のサラリーマンやOLがすべって転んでいる映像が出ていますけれど、あれなんか、こっちの人たちは、もう転ぶ以前の、歩いている段階から「ああ、危ない!」って思って見ているんですよ。「ああ、あんな勢いで交差点に入って行っちゃ危ない!」って。いつもの道路を歩いている体勢、腰から上の重心を前がかりにあずけて、つま先で踏み出して行く。とても怖い映像です。まあ、交差点の中に自動車の姿がないのが救いですけれど… でも、あの姿勢で転ぶと(重心がツルッと移動すると)、どうなるのかな。あまりこちらでは見かけない転び方、前の方に顔をバタッとぶつけるような転び方でしょうか。前歯を折ったり、庇った手の指を骨折したりするような転び方になるのかな。うーん、痛そう…

 何の話をしていたんだっけ?

 ああ、「土の上を歩く喜び」でした。雪の上を歩くのは、けっこう疲れる。自然と出歩くのがおっくうになりますです。その分、雪が融けて、北国の春が来た時の喜びは、全身で嬉しいのです。心も嬉しいが、身体だって負けずに嬉しい。そして、5月。茶色っぽかった風景にも木々の若葉がちらほらと帰ってくる。道ばたの枯れた雑草もぐんぐんと緑が濃くなってくる。そして、ある日、緑のキャンバスに「白」や「青」や「赤紫」の花々が溢れかえるように一斉に咲き乱れる。
 北国の5月〜6月はいいですよ。花だけじゃなくて、樹にはサクランボ、畑にはアスパラガスの美しい緑。梅雨のない空の蒼。朝の冷たい空気。

 やっぱり、嬉しかったんでしょうね。

 実家からの帰り道、今年初の「定山渓(じょうざんけい)越え」で小樽に帰ろう…としたのが運の尽きだったような気がする。行く途中に「道路情報館」ができたことをコロッと忘れていた。
 

5月20日(日)
71.道路情報館→7.望羊中山→40.ニセコビュープラザ→57.くろまつない→20.よってけ!島牧→14.いわない→35.オスコイ!かもえない→49.スペース・アップルよいち

 

 今年の「道の駅2001」は、エントリーした「道の駅」の数、じつに70館。それに、プラス1として、この札幌の「道路情報館」が名誉顧問的に入りました。ポイントには加算されないけれど、「全駅制覇」を名のるのであれば、この「道路情報館」スタンプが欠けた「全駅制覇」なんてありえるわけがないだろう!(恥ずかしくはないのか)と、無言のプレッシャーをビシビシかけているのです。
 じつは、「70館」と4月に聞いていて、もう、かなりうんざりしていたのです。新顔の「道の駅」の中には「あさひかわ」なんてものまであって、もう、こういう過疎の貧乏な町を応援するための補助金制度の集まりなのに、デカい図体の地方都市が割って入ってくるんじゃねえ!と思っていたのではありました。
 職安の列の中に、旧「たくぎん」の元課長だの部長クラスが割って入ってくるようなもんだ。ついに人口15万人を切ってしまった「小樽市」だってまだ我慢しているんだぞ。いい加減にしろよ!「旭川市」。凋落著しい「根室市」や「室蘭市」なら仕方がない…と私は思うところもあるが、いくらなんでも、旭川や函館クラスが入ってきていいわけはないだろうが!とか憤っていたのでした。(まあ、旭川の町中まで車乗り入れてスタンプとってくるのがメンドーくさいだけだ、という説もあるが…)

 
 
北海道地区「道の駅」連絡会
 

 「ちょっと考えさせてくれ…」とかカッコつけていたんですけどね。

 なんのことはない。定山渓温泉手前のカーブで「道路情報館」を見つけたら、手が勝手にハンドルを右折に切ってしまいました。(笑) まるで「ブレア・ウイッチ」のように、館内に吸い込まれ、この手が勝手に「道路情報館」スタンプを押してしまったのでした。(笑)

 あとは、もう(皆様、ご想像の通り…)一気です。本当は定山渓温泉で右折して小樽へ帰らなければならないのに、足はアクセル・ペダルをぐいっと踏んじゃって、一路直進、中山峠を目指して時速100qでブッ飛ばしたわけなのだよ。
 

2000年 5月19日(金)
40.ニセコビュープラザ→57.くろまつない→20.よってけ!島牧→I弁慶岬灯台→14.いわない→35.オスコイ!かもえない→J神威岬灯台→K積丹岬灯台→49.スペース・アップルよいち→L日和山灯台
 

 ちなみに、去年の「後志(しりべし)ラウンド」。「ニセコ→黒松内→島牧→岩内→神恵内(積丹半島)→余市」という回りは不動のものです。ある種、「一日コース」の定番ですね。だいたいこのコースで、今年の車の調子(まだブッ壊れはしないみたいだ…)とか、今年の体調(「灯台」が入らないと、ずーっと車の運転ばっかりになってあまり健康的ではないな…)とかを占います。まあ、なんとか上手く行くのでは…といった手応え。なにしろ、知床の山の中でプツンと車が動かなくなったりしたら大パニックですからね。そういう事態を避けるためにも「後志ラウンド」みたいな準備体操は本当に必要なんですよ。
 
 
 

 スタンプ・ラリーをやっている期間中、たいへんお世話になるのが「Mino's Home Page」というサイトです。ホームページの副題に《北海道の「道の駅」・「道路標識」・「ドライブ情報」》と表にはっきり銘打ってあるだけあって、いや、凄い! それこそ、この5月の時点で、もう「全駅制覇」をしてしまった…(終点の「道の駅」でも、まだ今年の全駅制覇ステッカー用意していなくて「あとで郵送します」という証明書を書いてもらった…)といった人たちが集まっています。
 去年の「灯台スタンプ・ラリー」の時も、開始後5日で全「灯台」をまわったという夫婦の話を聞いたことがあるけれど、あの時も、「いったいどういう連中なんだろう?」ととても不思議でした。本当にどういう人なんでしょうね。職業は?、年齢(とし)は?、人相は?などなど、本当に興味は尽きません。やっぱり元ヤンキーの若夫婦なんだろうか(子どもが3人くらいいたりして…)とか、意外に、プロのガイドさんとか交通課の若いお巡りさんだったりしたらどうしよう…とか、どんどん妄想は膨らんで行きます。
 その疑問の解明にはならないのだけど(「Mino's Home Page」読んでいても、やっぱり正体はよくわからないのよ…)、なんとなく、その手の人たちが集まっているのであろうことは窺えます。

 
******************************************************

初めてのドライブ旅行 投稿者:おやじ 投稿日: 5月25日(金)14時17分51秒
家族(子供3人、夫婦、祖父母)で 大洗からフェリーで苫小牧へ そこから標津へまた苫小牧と6日間で考えています。何かアドバイス宜しくおねがいします。
 
******************************************************
 

 えーっ、この時期に家族旅行ですか…(子どもの学校はどうなっているんだ? スタンパー一家?)

 おっかしいのは、こういうのに、ちゃんと答えてくれる人が世の中にはいるんだ…ってところですね。(勤務中にホームページ見てんのかい?)
 
 
******************************************************

苫小牧に着いてから 投稿者:えむのり 投稿日:5月25日(金)17時46分30秒
>おやじさん
苫小牧のフェリーターミナルに着いたら臨港北通を沼ノ端方面に行き、そのまま直進してR234に入って下さい。由仁町三川まで行ったらR274との交差点でR274に進み、日勝峠を越えれば道東エリアです。
R274は「石勝樹海ロード」という別名があり、その名の通り穂別町、日高町の樹海の中をアップダウンとつづら折りを繰り返しながら進む道央と道東を結ぶ国道です。
ただし、昼間のうちに走り抜けることをお勧めします。というのも、街路灯がないうえに反射板も少なくテールランプか、対向車のヘッドランプ頼りの走行になってしまうためです。おまけに、夜間は大型トラックがひっきりなしに走行します。さらに、道中ガソリンスタンドが少なく、燃料の残りをドライバーに警告する看板が立っているくらいです。
いかにも北海道らしいR274ですが、安全運転で。

 
******************************************************

今更ですけど。 投稿者:HIRO 投稿日:5月26日(土)13時06分11秒
>えむのりさん
北海道の道の駅の夜間スタンプは、僕のHP内の「道の駅」→「道の駅データ」に書いてます。
2000年のラリーを参考にしてるんで、現在も同じかどうかはわかんないんですけど。(^^;)
あと、「夜間スタンプはトイレに…」と書いてあっても、トイレに紙しかないようなこともありますんで、こだわるならその辺気をつけた方がいいですよ。2001年度版データは随時作成していく予定です。
>おやじさん
R274はホント危ないっす。(いろんな意味で)途中の道の駅<樹海ロード日高>、もしくは、その手前のセイコーマートというコンビニで休憩されることをおすすめします。
時間があれば、足寄町の「オンネトー」に是非。あそこはまさに自然の神秘だと思います。あと、道の駅<足寄湖>のソフトクリームは、全道一の味だと評判です。(僕らの中で)
では、くれぐれも安全運転で。

 
******************************************************
 

 他人の会話、盗み聞きするのはいかんよ…とは思いつつ(笑)、でも、「オンネトー」ですね、私もしっかりゲットしました。足寄は「オンネトー」に「ソフトクリーム」。しっかり記憶合金いたしました。で、結びの言葉を「くれぐれも安全運転」でキメるんですね。はい、了解しました。

 でわ、みなさん!くれぐれも安全運転で…(笑)

 「道の駅2001」が始まってしまいました。
 
 

 
2001年5月20日号 あとがき

■短大図書館の「インターネット版」スタートを記念して、スワン社のホームページもちょっと凝ったことをやろうとしていました。あれこれフロント・ページをいじっていて、なんか収拾がつかないほど画面がぐちゃぐちゃになってしまった。柄にもないことはやっぱりやるべきじゃないですね。余計な時間をくってしまった。

■ホームページを開いている人って、たいていの人は、「今の」自分のホームページ画面には不満なんですよ。もっとかっこいい画面にしたいなぁ…とか漠然といつも思っている。本当は、書いている内容(コンテンツ)が素晴らしいから読者や掲示板への書き込みは集まってくるのだけれど、当の本人はなかなかそれに気がつかない。たまたま雑誌や新聞なんかで取り上げられて、一見の客などがワッと増えたりすると、つい嬉しくなって(今まで気になっていた)ホームページ画面をチカチカ光ったり消えたりグルグル動いたり飛んだりする画面に変えて行く。

■あまり、イメージチェンジが成功した例って、見たことないですね。主宰者の真面目な気持ちや人の好い性格が伝わってくるだけに、とても残念ですけど… 本当は、人気が出た時には、ポロい画面なんかには多少目をつぶってでも、もっとコンテンツを書き込めば良かったのに…って思いますけれどね、でも、それに気がつく時は、もう人気や評価が一段落ついてしまった時なんです。難しいもんだなって思います。

■でも、なんて言うのかなぁ、今の日本のホームページ文化を取り巻く環境って、要するに「機械オタク」みたいな面子しかいないというのも貧困の原因ではないかと思うのです。「もっと大容量・高速の場を提供できますよ」というプロバイダとか、「チカチカグルグル画面」が得意のソフト屋さんとか、ホームページ主宰者の周りに集まってくるのは、そんな面子ばっかり。そういう環境で満足な人はそれでいいのかもしれないけれど、例えば私のホームページのような「読書サイト」なんかを開いている人にとっては、もっとちがう角度からのサポートがあってもいいのではないでしょうか。

■例えば、地元に(学内に)、こういう「読書サイト」を開いている人やグループがあるならば、地元の(大学の)図書館などは、そういう人たちへの仲介や支援をとってあげるべきだと思うのです。互いの存在を名のり合うだけでも、ずいぶんとちがった「読書」環境に変貌して行くのではないか。例えば、バブルの頃に買った大型汎用コンピュータ。ロクでもない風景写真ホームページやスカスカの蔵書データを載っけて図書館で独り占めしている暇があるなら、その豊富な大容量を「読書サイト」に開放してはどうなのか。個人ユーザーは、みんな、「10メガバイト」の制限の中でなんとか容量をやりくりしてホームページを運営しているんです。その人たちが、容量を気にしないで書き込むことができるようになったなら、こんな朗報はないでしょう。きっと良質の作品が地元に(学内に)生まれ出てくるのではないですか。

■考えられる図書館のサポートはまだまだあります。図書館なんだから、積極的に「本」のサポートをこそ行うべきではないでしょうか。「読書サイト」の人が読みたい…使いたい…と言ってきた本はどんどんその人に貸し出して行けばよいのではないでしょうか。また、「読書サイト」の人が、こんなコレクションがあるといいのに…と言っていたり、ホームページ内で作り上げた図書リストかある場合などは、それをどんどん図書館の書架に反映すべきでしょう。あるいは、図書館がいちばん得意のデータベース・ソフトや目録に関する技術(学)などは、どんどん「読書サイト」の人たちに開放して行ってしかるべきなのです。

■私は、基本的には、「図書館ネットワーク」という存在の価値をそのように理解しています。昔、埼玉県の学校(高校)図書館ネットワークの現役であった頃、私は、その「ネットワーク約30館、蔵書総数約70万冊」の読書環境の中でほとんど満足していました。ほとんど完璧なくらい、読む本、使う本に不自由したことはないと断言できます。自分の職業(司書)の時間を除けば、私は普通の一社会人ユーザーですが、「高校生のための本」の範囲で充分満足な読書ライフでした。「高校図書館の本」とはいえ、それが30館という単位でネットワーク化した場合、その威力にはちょっと言葉では上手く説明できないほどの手応えがあります。

■「同じような高校(図書館)」というものはないんです。30校あったら、30の図書館の個性があります。底辺校から進学の名門校まで、それぞれちがう個性や蔵書コレクションがあるのです。「どこでも似たような蔵書」などという言葉が、どれほど図書館やネットワークを知らない貧しい人間の戯言であることか、教えてあげたいくらいです。「高校図書館」ひとつとっても、これくらいの広がりがあります。こういうネットワーク化が地域の小・中・高校図書館〜大学図書館〜公共図書館〜専門図書館の間でも起こったなら、さぞかし私の読書ライフは充実することでしょうね。たった「70万冊の図書館」ではありましたが、あの時、たしかに、来るべき「私の図書館」の幻を垣間見たような気がします。味をしめた…といいましょうか。

■図書館の人へ。同業の図書館に対しては《ネットワーク》化の意志を積極的に提示して行きましょう。そして、《読書サイト》の人々に対しては、より一層の積極的な支援を!

■今、生まれつつある読書ホームページの人たちへ! どうか、頭の片隅に《図書館》を忘れないでおいてください。《私》というものの幅を広げるためには、まだまだ《図書館》は使えます。捨てたもんじゃありません。<新谷>