■「だから、二十世紀に移ることからはじめるわけですね?」と、テリーがきいた。 「そう。いわば初心者用のゲレンデのようなものですから。二十世紀は楽ということになっています。懐疑を知らぬ時代がありとすれば、今がそれです。二十世紀へは《わたしは未来人》と大書した旗をふってはいりこんできても、今の人たちはほんとうかもしれぬとは思いません。せいぜい首を横にふってなぐさめ顔にほほえんで、精神病院で診断を受けさせるぐらいのところです……われわれの時代区分によれば、二十世紀は中世の最後にあたります。さあ、さあ、一杯お飲みください。」 (「未知の来訪者」 ジョン・ロウ・タウンゼンド作 岩波書店) ■ちょっと愚かで、ちょっと気のよかった「中世」の終わり… いままで読んできた本の中でも、この言葉ほど、私を落ち着かせ、少しだけ勇気を与えてくれる言葉はなかったと思います。若い時に、タウンゼンドを始め、たくさんの本にめぐりあえた幸運に感謝したい。 <新谷> |