○
新人生
わが
君泣けば我また泣きし秋の夜の
秋の牧さびしきに居て物言はず人をたのまぬ友たづねける
秋の
否といふ君をうらまず我がこころ我をはかなみ涙に落つる
○
高田紅花
雁わたる秋空ながめものとなく人恋ひ泣くに我を忘れぬ
雨ふれば物ぞ思はる病みこやす窓の芭蕉に秋風のして
霰降るさは限りなき天の野の神の戦の羽々矢かも降る
櫓の音に
秋の旅白石さむく月氷る伽藍の跡の羅馬路に入る
うごかざる秋雲白う照りふくめ
[小樽日報 明治四十年十一月七日・第十五号]
※テキスト/石川啄木全集・第8巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人