五月から始まる啄木カレンダー
デジタル篇
 
 

 
明治四十丁未歳日誌 (1907年)
(「啄木勉強ノート」HPより引用)
 
明治40.9.4 小学校職員を観察
橘智恵君は真直に立てる鹿ノ子百合なるべし
 
 例の如く学校の仮事務所にゆく。大竹校長は何故か大切なる仕事は大体予に任せるなり。晩年には何処か田舎の学校の校長になりて死ぬべき小西君の眼は兎に似たり。思ひ切って色褪せたる洋服着たる遠藤君は、三十五六の年輩にて今猶親と伸悪く、怪しき妻君と共に別居する男なり。加茂清治は憚る事を知らぬ面白き男だり、米屋の若旦那にて同僚中一番よき衣着るはこの人なり。代用なる伊富貴斎宮は名前からして気のきかぬ男、強姦でもやりさうた人相したり。
 女教師連も亦面白し。遠山いし君は背高き奥様にて煙草をのみ、日向操君は三十近くしての独身者、悲しくも色青く痩せたり。女子大学卒業したりといふ疋田君は豚の如く肥り熊の如き目を有し、一番快活にして一番「女学生」といふ馬鹿臭い経験に慣れたり。森山けん君は黒ン坊にして、渡部きくゑ君は肉体の一塊なり。世の中にこれ程厭な女は滅多にあらざるべし。高橋すゑ君は春愁の女にして、橘智恵君は真直に立てる鹿ノ子百合なるべし。
 
 

 
明治40年9月4日
橘智恵君は真直に立てる鹿ノ子百合
 
 みんな大火の後始末で忙しいというのに、何言ってんだか…この人は。
 
 函館の人たちって、人がいいんだなぁ。小樽だったら、寅吉先生の登場を待たずとも、即刻誰かにぶっ飛ばされているでしょうね、こんなことを言ってたら。(なにせ、亀井勝一郎氏によると、我らはロマンを解しないリアリズムの田舎者ですから…)
 
 『啄木の息』も優しいしなぁ…
 
石川啄木が歌を作り始めて百年。今もなお瑞々しく語りかけてくる彼の魅力を追いかけて、その息づかいに触れる道を探してみます。
 
 『啄木の息』は良サイト。啄木ファンならずとも、一般人の誰もが読んでも面白い。なおかつ、なにかしらのインスピレーションやアイデアをひとつふたつと与えてくれる。その上で、そういう良サイトがあえて「啄木」を名乗っているというのは、イメージ戦略としても(「啄木」も自分も両方輝く…という意味で)かなり高度な技であると感じます。相当の知性がないとこういう技はできません。まさに「鹿ノ子百合」ね。
 この点は、前回ご紹介しました『白樺の小径』HPや、明日9月5日分でご紹介する予定の『微照庵』HPにも共通する特徴です。優れたホームページは、我らを「白樺」の林や「一葉」の生きていた明治の江戸東京まで連れていってくれる。
 
 『啄木の息』。日記や文学紀行も面白いが、他に「To記Do記−見た映画、読んだ本、旅をして、ときどき感じたこと」というページもとても面白い。愛読者です。特に、今年の夏の旅行記「パリ」には感心しましたね。フランスに行きたしと思えども別に船賃も持ってない身の上ですけど、たとえパリに行けたとしても俺にはこういう文章は書けないなぁ…と痛感。でも、このページを読んだおかげで、実際のパリへ行くよりも得難い体験をした夏でした。
次回は「9月5日」

 
 
九月、啄木は小樽の街へ…
 
カレンダー価値の減却により、9月からの「啄木カレンダー」は
400円の定価になります。さっさとカレンダー部分を取り外して
単純な「啄木絵葉書」で売れば…というご意見もあるのですが、
スワン社独立の「2003年」を心に刻んで生きていたい想いが
まだ残っているのです。9月一月間、よく考えてみます。<新谷>
 
五月から始まる啄木カレンダー 短歌篇 日記篇
表/カレンダー,裏/ハガキ仕様 各12枚組 プラスチック・ケース入り
定価 各400円(送料共)