小樽マジカル・ミステリ−・ツア−A
《小樽の街を歩こう 第19回/短大図書館だより 2003年1・2月合併号》
 
 
 
 
1.小樽・博覧会の時代
 
 今、市立小樽文学館にて、特別展『小樽・博覧会の時代』展が行われています。これは、過去、小樽で開催された5つの博覧会について、当時の資料を一堂に集め「博覧会」の博覧会を行おう!という粋な試みです。
 
(これに併せて、同館JJカフェの隣りでは「現代の博覧会」とでも言うべき、札幌の「レトロスペース坂」の展示品が一時的に小樽文学館の方に大集合しています。こちらもド肝を抜くコレクションです。文学館に行ったら、ぜひご覧ください。博覧会の熱狂が文学館内に木霊しあって、いや、大変なことになってます…)
 
 
 北海道大博覧会、全5回の内訳は以下の通り。
 
 @開道五十年記念北海道博覧会 第三会場・小樽水族館 (大正7年)
 A拓殖博覧会・小樽海港博覧会 (昭和6年)
 B北海道大博覧会 (昭和12年)
 C北海道大博覧会・小樽会場 (昭和33年)
 D'84小樽博覧会−新しい海のある生活都市へ (昭和59年)
 
 今の小樽の人たちで、記憶に残っている「博覧会」といえば、おそらくは、B「昭和12年」〜C「昭和33年」〜D「昭和59年」のどれかだと思います。現在、50歳以上の方ならば、たぶん「昭和33年」。70歳以上の年輩の方ならば「昭和11年」でしょうか。
 ただ、現在70歳以上の方々をしても、かろうじて小学生の子どもの時に親に連れて行ってもらった…という感じです。
 「昭和11年」の博覧会で、当時壮年だった、家族を連れて博覧会を観に行ったという方は現在90歳を越える方々でしょうから、この事実ひとつとっても、いかに「大博覧会」といった19〜20世紀的なイベントが私たちの周りから絶えて久しいかがうかがわれます。
 そう言われてみれば、日本国中を見ても、1970年に大阪で行われた「万博」以後、あまり大々的な博覧会の話って、聞かないですね。
 
 
2.龍宮閣
 
 いやー、何度見ても「龍宮閣」の写真は凄いですね。この、なにか得体の知れない熱狂(狂気?)というか、情熱というか、ただただ圧倒されるばかりです。
 

『小樽の建築探訪』より「龍宮閣」
 
 いちばん「大博覧会」的な物なのではないですか。つまり、「なんでこんなものをつくったのだろう?」とか、「誰がどうしてこんなものを考えたのだろう?」とか、もうただただその不思議さに単純に驚くしかない…という。「大博覧会」の最も根源的な部分を体現していると思います。
 
 そして、「龍宮閣」は別の意味でも「大博覧会」的。それは「もう、ない」というところです。
 もはや、空間の産物ではなく、時間の産物の方へ「龍宮閣」は次元を移動して行ってしまったのでした。小樽のオタモイに「かつて、あった…」という神話や伝説の時間の中へ移動してしまいました。
 
 たぶん、もう百年経てば、「マイカル」だって、小樽の伝説の時間に仲間入りしていることでしょう。22世紀、故老は語る。「昔、小樽の海岸に、今の札幌駅から大通り公園くらいまであるような巨大なデパートがあったんだよ…」。子どもたち、「えーっ、うそーっ!」てな調子で昔話に花が咲いていることのではないでしょうか。
 
 
3.北海道大博覧会
 
 昭和12年の北海道大博覧会では、「龍宮閣」は存在していました。今の「マイカル」のように。
 
 竣工が始まったのが昭和8年。翌9年にはオタモイ遊園地ともども建物が完成しています。『小樽の建築探訪』に建設中の「龍宮閣」の写真が載っていますけれど、いや、大変な工事ですね。建築資材は、冬に馬そりとトロッコで運び、足場丸太は艀(はしけ)で海から搬入したそうです。けれど、屋根ぶきをする板金職人は恐ろしがって誰も来てくれなかったとか。しかたなく大工さんが屋根ぶきも仕上げることになったそうですけれど、この仕事を請け負った大工さんがいたこと自体が奇跡に感じます。
 
 この「龍宮閣」、昭和33年の北海道大博覧会ではもう存在していませんでした。昭和27年5月の火事で焼け落ちてしまったのです。「龍宮閣」の隣にあった兄弟施設「オタモイ遊園地」や「庭園」も崖崩れであっけなく消えてしまい、ここに至って、今私たちが知っている「オタモイ海岸」の姿になってきます。
 
  
 今、オタモイ海岸に行くと、かつてここに「龍宮閣」があったという断崖絶壁の場所に、当時の土台部分の跡を見ることができます。もちろん立入禁止ですが、この子どもたちが立っている素堀のトンネルなどは当時のままに残っており、そこをくぐる時など、まるで『千と千尋』のように、このトンネルを出ると「昭和12年の小樽」が出現するのではないか…とさえ思わせる迫力です。
 

 
文学館のパネルに不思議な「小樽」を見つけました!
 
 
「雨乞滝」って、今でもあるのかな?
 
 
「龍宮閣」だ…
 
 
しばし、昔日の「小樽」にタイムトラベル…