Deep in Otaru
《小樽の街を歩こう・インターネット編 第13回/短大図書館だより 2002年4月号》
 
 
 前回紹介しました「K's Photo Album」(カプリース)のリンク集から伝って来ましたのが、こちらのホームページ「Deep in Otaru」です。富岡町に住む(と思われる)ミステリアスな主宰者「Chisato」さん。生まれは東京都渋谷。小樽に越して暮らしはじめて6年。小樽の街の日々をホームページに書き綴ります。
 
 どのページも読ませますが、やはり私の目を引いたのは「deepに小樽を知る」の並びです。
 
 T 小樽フリークになるための文芸
 U 小樽穴場探訪 その壱/アドベンチャーへの道
 V 小樽穴場探訪 その弐/食道楽への道
 W 小樽穴場探訪 その参/温泉道楽への道
 
 第T章は、《小樽》を題材とする、《小樽》が舞台になったフィクションやノンフィクション本、マンガ、映画の網羅的紹介です。私も、一応、人に本を紹介したり案内したりする職業(図書館司書)の端くれですから、この章は特に真面目に、そして少しだけライバル心を持って読ませていただきました。
 
 感想。「たいへん勉強になった…」
 
 『オーソドックスコース』や『映画で小樽』は、まあ、引き分けでしょうか。ここに出ているタイトルは、どれも《小樽》を語るのならば、当然読んでいなければならない本、観ておかなければならない映画ばかりです。プロならば。
 
 でも、それらの全てを、一市民のレベルで楽しそうに易々とやっている「Chisato」さんの姿はちょっと羨ましいものを感じました。カッコいいですね。ご自分で撮られたと思われるデジカメ写真も効果的に文章を引き立てています。
 
 「勉強になった…」のは『漫画で小樽』の部分。少女マンガは、さすがに私は素養がありませんから。ここにあげられているタイトル中、読んだのは『柳沢教授』と『動物のお医者さん』の2冊だけ。あとは初めて耳にするタイトルばかりでした。
 この章に、私の方で、1冊だけ補足しておきたい本(映画)があります。
 
 
 これは、マンガ版『サムライの子』。1960年の山中恒の児童小説『サムライの子』を読んで感動した若き日の(『うしろの百太郎』などを描き始める遥か以前の)つのだじろうが直々に山中氏のもとへ出向き漫画化の承諾をもらった…といういわくつきの作品です。1962年に少女雑誌『なかよし』に連載。単行本が1969年の虫コミックスというかなり古い本で、もう古本屋でも見かけることは少なくなりました。
 
 著者に直接頼み込んででも自分で漫画化したいと思ったほどの作品ですから、その熱意たるもの、半端なものではありません。つのだじろうは何回も小樽を訪れ、自分で背景のスケッチを数限りなく描きとっています。例えば、こういうカット…
 
(著作権の関係で掲載することができません)
 
 この絵は、現在の、小樽公園入口のあたりにある「小樽ミルク・プラント」ですね。こんな前からあったのか…ということも驚きなのですが、こういう1962年の小樽の街の隅々を写しとっているつのだじろうのスケッチは貴重な小樽の財産です。
 もし原画が残っているのならばぜひ小樽市で引き取ってほしいものだと思います。本当に、当時の中央バスの車体のデザイン、当時の中学生のセーラー服まで描き込まれた貴重な歴史資料なのですから。
 
 『サムライの子』が人気のあった小説であることは、この作品がマンガ化ばかりではなく映画化もされていることからも窺えます。当時の稲穂小学校に大がかりなセットを組んでロケも行われたとのこと。(私もこの映画の存在は知ってるものの、実際に観たことはないのです。)
 
 いろいろな想いを触発させてくれるホームページ「Deep in Otaru」。個人的には『小樽のくらし・参』にある『小樽の音』という小品には魅せられました。
 
 
☆ 紹介しました『サムライの子』は、小説版・マンガ版とも短大図書館で貸出をしています。図書館カウンターでご予約ください。