Love Letter
《小樽の街を歩こうF/短大図書館だより No.43(2000.2.1)》
 
 
 韓国で日本映画が解禁され、そのラインナップの中でも群を抜いて岩井俊二監督作品『Love Letter』が好評のようです。ここ数年、台湾で「北海道」ブ−ムが起こっているのは知っていたのですが、それに加えて、今度は、韓国で「小樽」ブ−ムとは。やはり、温帯モンス−ンのアジア文化の中では見られない「西欧風」な風土がウケるのでしょうか。アジアの人が抱いている「日本」のイメ−ジとはかけ離れたような町並みが画面に映ると、みんな、びっくりするのでしょう。日本にもこんなところがあったんだ!みたいな驚きかな。
 
 この映画、本当に、1994年の小樽の街のさまざまな場面を撮っています。きっと(次回で紹介する『はるか、ノスタルジィ』とともに)20世紀最後の「小樽」の街の様子を伝える映像資料として貴重なものになって行くことでしょう。(小樽短大図書館の本も時々画面の中で活躍していますし…)
 
 個人的には、この映画は「神戸と小樽をむすぶラヴレタ−」なのだから、(もうちょっとだけ頑張って)もっと「神戸」の街の風景を映しておいてほしかったなぁ…という恨みがありますけれど。
 ご存知のように、この映画が日本で公開された1995年初頭は、1月の「阪神・淡路大震災」から始まった激動の年でした。おそらく、この映画が震災前の「神戸」の街の様子を映した最後の映画作品になるのではないかと思います。だからこそ、そんなに予算を切り詰めないで、神戸ロケをふんだんにやってほしかったです。
 映画の中では、「神戸の生活風景」を表現しなければならない場面でも、実際には小樽に組んだセットを使ってやっているんですね。これ、映画を観ている「小樽に住んでいる」私たちには、けっこうな混乱をまき起こします。例えば、主人公の中山美穂が
 
  わたし、小樽に行ってみる…
 
と言う場面がありますけれど、バックのセットが運河にある有名なレストランなので、小樽市民だけは「もう、小樽に来ているじゃないか…(笑)」となるんですね。おまけに、中山美穂は「小樽−神戸」の一人二役をやっていますから、相当混乱すること請け合いです。
 
 
 いつもなら、この辺りで、主人公が歩いた小樽の街を私たちも歩いてみよう!となるところなのですが、なぜかしら今回は自信がない…
 
 というのは、ホ−ムペ−ジのサイトで、ものすごく完成度の高いものを見てしまったからなんですね。『Love Letter』のためだけの非公式サイト。でも、ホ−ムペ−ジの「内容、画像等の無断転載など一切を禁じます」とのことなので、この紙面上で、画像をコピ−して紹介したりすることができないのがとても残念です。アドレスはhttp://www.asahi-net.or.jp/~pd9m-td/LL/lovle2.htmlですので、各自でこのサイトに入ってみてください。ホ−ムペ−ジの表現力も「ついにここまで来たのか!」と感じることでしょう。
 
 
 最後に(これは<図書館>だよりなので)少しだけ小説版の『ラヴレタ−』について書きたい。小樽の主人公「藤井樹」は「市立図書館」に勤めている司書という設定になっているのですが、例えば、次のような場面…、
“主”というのは同じ図書館の同僚です。
 
  「ちょっと何した?今」
  すると“主”はこれ見よがしにわざと本を破り始めた。書棚に本を差す作業に付け加えて、
 それぞれのペ−ジの一枚を破き、丸め、ポケットに放り込むという作業を繰り返した。
  「結構いいストレス解消になるのよ、これ」
 
 こ−んな図書館員、いるわけないだろう…
小樽と言わず、世界中、どこの図書館でも、こんな図書館員はいません。もしいたら、それは、覚醒剤やってる警察官と同じくらいの大問題です。
 
 何故か<図書館>に関するイメ−ジが、この人、ものすごく歪んでいるのを感じる。<本>とか<図書館>のイメ−ジが歪んでいる人というと、私などは、つい反射的に「寺山修司」という名を思い出してしまったりするのですが。それはそれで、自分の好みとして、岩井俊二という人の資質や才能や将来性の大きさを私は素直に認める者ですけれど、一応、現役の図書館人なので、一言書きました。
 
 
 ■小説版『ラヴレタ−』(岩井俊二[著])………913.6-Iw
 ■レ−ザ−ディスク『Love Letter』………LD91-Iw